●.先日、ネットで「環球時報は戦争をあおりまくる三流タブロイド紙」的な言葉を目にしました。確かに愛国心を強調する保守系のポジションで固定読者をつかんでいるメディアですが、ただ想像されているほど単純なメディアじゃありません。(文:高口康太)
レコードチャイナ 配信日時:2013年12月5日 9時10分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=80040&type=0
建前「日本とは持久戦だ!」
本音「戦争しないのでガタガタ騒ぐな」
=環球時報社説の読み方指南
先日、ネットで
「環球時報は戦争をあおりまくる三流タブロイド紙」
的な言葉を目にしました。
確かに愛国心を強調する保守系のポジションで固定読者をつかんでいるメディアですが、ただ想像されているほど単純なメディアじゃありません。
特に社説の魔球的ロジックはすばらしい。
評論文の試験に採用すると誤答が続出することは間違いなし、です。(文:高口康太)
▼問題文
テキストとするのは
2013年11月29日付の社説「中国が一流の強国となることを日米は邪魔できない」
です。
まずは冒頭4段落をお読みください。
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中国台頭の戦略環境は深刻に悪化したのだろうか?
日米が手を組み中国の更なる発展を抑制、中国のさらなる発展を窒息させるのだろうか?
将来起こるであろう不測の事態に耐える力を中国は十分に持っているのだろうか?
こうした問題が我々につきまとうが、本当の答えは時間の経過を待つしかないのかもしれない。
だが歴史的な経験と国際政治の基本的なルールは我々に先行きを教えてくれる。
一つのきわめて重大な現実は中国はすでに工業文明時代に入ったということだ。
中国の工業化の道のりはまだまだ長く、米国とはなお一定の距離がある。
ゆえに我々は西側諸国の前で謙虚に振る舞うことを余儀なくされているのだが、しかし一方で言えるのは、人類史上、中国ほど巨大な工業化国家が外部の力に征服されたということはないという事実だ。
外部の力で現在の中国を打ち倒す、これは西側にも想像すらできないことである。
もっと重要なことは中国台頭の原動力は一般市民がよりよい生活を送るようになったという点にある。
国家による政治設計がもたらしたわけではない。
中国の一般市民がよりよい日常生活を送ることが、この国を米国と肩を並べるポジションへと押し上げることになるのだ。
その意味で中国台頭とは本当の意味での“人民戦争”である。
中国自身が根本的な問題で過ちを犯さないかぎり、日米は中国抑止に総動員をかける可能性はきわめて小さい。
彼らの策略は中国に圧力をかけ影響を及ぼし、中国社会自身が内部から変形するようにしむけ、崩壊に至らせることだけだ。
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文章読解とはたんに字面を追うことではありません。
文章を読みながら想像力を働かせ、著者が何を言いたいのか想像していく作業でもあります。
というわけで、この冒頭3段落を読んで、この「中国が一流の強国となることを日米は邪魔できない」という文章は何を言いたいのか、予想してみましょう!
▼答え合わせ
「中国は西側に倒されることはないから安心。俺たちは強い!」
と回答した方、残念ながら間違いです。
「日米は戦争をしかけてこないが、内部崩壊を誘発するような工作をしかけてくるから気をつけろ」
と回答した方、惜しい。
「中国の工業化は米国にはまだ引き離されている」
と答えた方、全然違います。
正解は
「言論の自由とやらで中国国内に亀裂が生じるのは勘弁。
あと愛国主義は大事」
であります。
あ、石は投げないでください。
後半のポイント部分を見てみましょう。
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中国で意見が多元化するのはきわめて正常だ。
多くの口論は科学的決定、社会的共通認識の促進に有利だろう。
しかし今、一部の人々はイデオロギーの標榜に熱中している。
すべてを欧米化することで中国の主流的価値観と対抗しようとしているのだ。
こうしたイデオロギーに基づく対立はさまざまな亀裂をもたらす。
議論があればあるほど分岐は多くなる。
こうした分裂は日米が望んでいるところであり、彼らが促進しようとしているものでもある。
中国の足並みを乱すための近道なのだから。
「中国はインターネット時代の言論の自由を本気で考えなければならない」。
この課題に共通認識が生まれることはなく、永遠に問題のままだろう。
しかしどのような形で言論の自由を構築したとは言え、社会の分裂と対立を扇動するような言論は好き勝手にネットに流してはならない。
これは公の誹謗中傷を禁じる法精神にも背くもので、法によって制裁を加えなければならない。
社会道徳規範と人文価値観に背くものは世論と学問の批判を受けなければならない。
愛国主義は中国のさらなる台頭にも欠くことのできないものだ。
国家の士気にとって重要な源泉だからというだけではない。
重大な時期に社会の亀裂を応急措置するリソースでもあるからだ。
愛国主義発揚の社会環境はすでに大きく変化している。
これは新たな試練だ。
現在、中国国内のインターネットには愛国主義をあしざまにいう異端邪説が流通している。
その有害性はきわめて強く重視されなければならない。
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▼環球時報社説の罠
面白いのは、単純に冒頭と後半で論旨が違っているという点ではありません。
日本を批判するように見える社説でもその真意は国内向けだったりするというクセ球っぷりが面白いのです。
社説は胡錫進(フー・シージン)編集長が書いているのですが、よくあるパターンとして
★.前半は中国の愛国者を満足させ持ち上げるような内容を書き、
★.後半でそうした愛国者にも戒めとなるような言葉を書く
というものがあります。
これはその典型ですね。
他にも「日本との戦いは持久戦になる」―「押したり引いたり外交上の駆け引きがあるんだから、おまえらは戦争しろしろ騒ぐな」とかもありました。
メディアで引用する時にはついつい一番どぎつい部分を引用してしまうわけですが、それだけがすべてだと思うと、「環球時報はおれたちの味方や!」と冒頭だけでからめとられている中国のタカ派な庶民と同じ罠に落ちてしまうのでご注意を。
◆筆者プロフィール:高口康太(たかぐち・こうた)
翻訳家、ライター。豊富な中国経験を活かし、海外の視点ではなく中国の論理を理解した上でその問題点を浮き上がらせることに定評がある。独自の切り口で中国と新興国を読むニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。
』
ではさて、下の環球時報の記事をどう読み解いたらいいのか。
バカバカしい内容と一蹴してしまうのも能がない。
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レコードチャイナ 配信日時:2013年12月5日 12時2分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=80081&type=0
中国に強硬な日本に対して「友好的であれ」とはいかなる発想か、理解に苦しむ―中国人歴史専門家
●4日、中国・ロシア関係史研究会の王海運副会長は、中国は日本に友好的であるべきではなく、強硬に対応すべきだと指摘した。写真は中国で保存されている支那事変画報。
2013年12月4日、中国・ロシア関係史研究会の王海運(ワン・ハイユン)副会長は、中国がいかに日本に対応すべきかについて、中国紙・環球時報に論評を掲載した。
以下はその概要。
先日ある座談会で、大きな影響力を持つ専門家が中国の日本に対する外交姿勢について触れた。
その内容は、日本の右翼勢力はほんの一握りにすぎず、日本は中国の安
また、別の専門家は
「日本は中国の一衣帯水の隣国であり、遠くの親戚よりも近くの隣人という言葉もあるように、日本に対して友好的な方針を堅持すべきだ」
と強調した。
日本政府は中国に対してこんなに強硬であるにもかかわらず、中国は日本に対して友好的であるべきというこうした論調を聞き、理解に苦しんだ。
中国には大国の尊厳が必要ないとでも言うつもりなのだろうか?
百年の歴史において、日本は複数の対中侵略戦争を行った。
さらに、日本は朝鮮半島を侵略し、太平洋戦争を引き起こした。
歴史上の日本は侵略が習性となっていたのである。
今日の日本は、日本の行方を決定づける相当部分の政治勢力が侵略の罪を認めないだけでなく、逆にかつて侵略を受けた国に対してやりたい放題に報復している。
さらに、日本の右翼政府は平和憲法や専守防衛の原則を露骨に否定し、早急に軍事強国にしようと目論んでいる。
日本が東南アジアの安全秩序の挑戦者となり、中国の安全を脅かす脅威の源となっていることは明らかだ。
日本政府は中国の再三の警告を無視し、両国の政治家が残した「棚上げ」の共通認識を破り捨て、釣魚島(日本名・尖閣諸島)を“国有化”し、さらに“争い”の存在までも認めようとしていない。
日本はわが国の固有領土である釣魚島を占領し、さらにこれを機に第二次世界大戦の歴史的結論までもひっくり返そうとして、東アジアの安全秩序を乱している。
日本は数十年前に防空識別圏を設定し、その範囲は中国の目前にまで迫っているにもかかわらず、現在中国が正当に設定した防空識別圏に対しては強烈な抗議を行ってくる。
中国は日本との友好を二度と無条件で議論すべきではない。
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レコードチャイナ 配信日時:2013年12月6日 11時59分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=80093&type=0
文章「祖国がなくなれば、全てを失ってしまう」、ネット上で拡散―中国
2013年12月4日、「祖国がなくなれば、全てを失ってしまう」という文章が、近頃中国のネット上で広まっている。
その内容の一部は次の通り。人民日報が伝えた。
いかなる時も、社会情勢が動揺し最も被害を受けるのは国民だ。
国家主権と領土保全を自発的に守ることが、国民一人ひとりの共通認識であるべきだ。
人はいつも、失って初めて今までの生活がどんなに素晴らしかったかに気づく。
我々が頼れるのは祖国のみであり、祖国が強大で、安定していることが、国民の幸福と自由の前提である。
多くの苦難を味わった過去の中国の歴史は、我々に多くのことを教えてくれる。
道義とは?
真情などどこにあるのか。我々は弱く、貧しくなり、団結が失われたではないか。
古来よりこの世界は弱肉強食。
国がなければ家を持つなどありえない。
我々は習近平(シー・ジンピン)主席を擁護する。
なぜなら我々の多くは自然災害を経験し、十年間の文化大革命を経験し、上山下郷運動を経験し、改革開放を経験してきたからだ。
我々の世代は、経済的に貧しく文化的に立ち遅れた状態から、発展し、繁栄したこの数十年の改革をこの目で見て体験してきた。
我々は、これほど大きな国を統一し、リードしていけるのは共産党だけだということを良く知っている。
中国がひとたび共産党の指導を失えば、天下は乱れるだろう。
中国が乱れることは、13億の国民の災難である。
我々は習近平主席を信じる。
なぜなら、習主席は中国の国情を良く知り、政治家としての経験も豊富だからだ。
末端から一歩ずつ階段を上ってきた習主席は、中国の民情、国情、地方、中央の事情に詳しい。
知恵と気迫を持ち、機知と智謀に長け、強靱さと安定さを持ち、柔と剛を兼ね備える習主席は、大局の安定に対して自信を持っている。
我々は習近平主席を支持する。
なぜなら習主席は「人を正す前に、まず己を正す」という意欲を持ち、「大きなトラにも対峙する」という勇気と戦略を持つからだ。
今の中国の現状を変えるには、まず党内から、上層部から始めなければならない。
また、大きな利益団体の改革にも強硬な態度で臨む覚悟があってこそ、人の心をつかみ、国民の信頼を勝ち取り、国の安泰を実現することができる。
西洋諸国は今、中国のことを「大きいだけで強くはない国」と見ている。
我々は強くなる前に足並みを乱してはならない。
頭を上げ、我々の国を愛そうではないか。
国と民族が良くなることで初めて、国民全体が良くなることができる。これを忘れてはならない。
(提供/人民網日本語版・翻訳/ SN・編集/武藤)
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提灯記事、ショイショ記事ということである。
さほどに共産党と習近平を持ちあげねばならぬ状態に陥っているということなのだろうか。
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