2013年12月25日水曜日

反日デモは習近平打倒の政治運動か?:毛沢東生誕120周年

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●習近平共産党総書記(右)と毛沢東主席(AFP=時事)


レコードチャイナ 配信日時:2013年12月25日 20時26分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=80911&type=0

反日デモは習近平打倒の政治運動か?過熱する周永康失脚報道を読む


●前中国共産党政治局常務委員、前中国共産党政法委員会書記の周永康(ジョウ・ヨンカン)が自宅に軟禁され、取り調べを受けていると報じられています。(文:水彩画)写真は薄熙来。

 前中国共産党政治局常務委員、前中国共産党政法委員会書記の周永康(ジョウ・ヨンカン)が自宅に軟禁され、取り調べを受けていると報じられています。
 日経新聞のiPhone報道よろしく、これまでに何度も「逮捕された!」との誤報が繰り返されてきましたが、今度こそ現実となるのでしょうか?
 (文:水彩画)

■周永康、3回目の正直でついに拘束か?!容疑は「政変を企図」

 「周永康拘束」の報道は今年だけで3回目となります。
 ただし前2回は香港英字紙サウス・チャイナ・モーニング・ポストの報道でしたが、今回は台湾の聯合報が火種です。
 また星島日報がスクープした中国共産党高官(司庁局級以上)のみに伝達された機密文書によると、その容疑は
 「政変を企図したこと、汚職」
だといいます。

 政変ということは、つまり失脚した薄熙来(ボー・シーライ)元重慶市委書記がらみの問題だったことを強く裏付けるものとなりました。
 これまでの報道では汚職がらみばかりがとりあげられてきましたが、元政治局常務委員が経済犯罪で捕まるとは考えられません。
 本当の容疑は軍事力の私用などの問題だろうと考えていたので、今回は本命ではないかと盛り上がるものがありました。

 ただ聯合報の1日の報道を受け、2日にも中国当局が正式発表するのではとも噂されていたのに、いまだに公式な発表はないままです。

■沈黙する中国国内報道、盛り上げる海外メディア

 しかし正式発表はなくとも、海外メディアによる外堀を埋める報道が続きます。
 5日、ロイターは、周永康の息子が9月に帰国し、すでに双規(共産党紀律部局による拘束、取り調べ)されている蒋潔敏(ジアン・ジエミン)前国有資産監督管理委主任の件で調査に協力していると報じています。
 ちなみに周永康の息子の名前は諸説あるようで、法輪功系メディアの大紀元は周斌(ジョウ・ビン)と表記していますが、最近では周濱(ジョウ・ビン)と表記するメディアが増えてきました。

 中国政府批判で知られる在米華字メディアの博訊も参戦。
 4日に「中共「二号特別案件」決着非合法的国家権力掌握の周永康夫婦拘束」、5日に「「二号特別案件」決着周永康運転手が郭永祥と前妻殺害共謀を供述」との報道。
 「薄熙来と謀って習近平(シー・ジンピン)の殺害を計画した」
 「前妻を事故死に見せかけて殺した」
という容疑が加わりました。
 まあ以前にも
 「薄が総書記、重慶市長で薄の片腕だった黄奇帆が総理」
 「周はその後ろで院政」
ともくろんでいたというクーデター画策話は流れていたので、目新しい情報ではありませんが。

 またちょっと面白いのは周永康に拘束を言い渡した瞬間について、まるで見てきたかのような描写をしている点です。
 栗戦書(中央弁公庁主任)が指揮権を持つ中央警衛局が出動。
 周に双規を言い渡すとその場に卒倒したのだとか。
 ちなみに中央警衛局を使ったのは、周が警察、司法の全権を握る政法委員会書記だったためです。
 そのため警官や武装警察を酒、中国全土から500人集めたとのことです。

■反日デモも周永康の仕業、過熱する海外メディア報道

海外メディアの報道はさらに過熱します。

 6日、星島日報は博訊網をソースとして周の兄弟姉妹3人が全員拘束されたと報道。
 その際、数億元の現金預金が見つかったのだとか。
 ただし中国政治ゴシップに強い香港紙はこのネタを完全にスルーしています。

 スルーといえば、サウス・チャイナ・モーニング・ポストの“スクープ”の際、他の香港紙は追っかけ報道せずに黙殺したのですが、今回は香港紙の太陽報、東方日報が参戦しています。
 「周が少なくとも2度習近平暗殺を計画」
 「昨年9月の反日デモは習近平体制誕生への妨害工作」
という内容。

 もっともその真偽については疑問もあります。
 2012年8月に開かれた北戴河会議で長老から厳しく責められ、「政治生命オワタ」と察した周が、なぜか習の暗殺に走るというあまりよくわからないストーリーです。
 暗殺の手段は会議室に爆弾を仕掛けたり、三〇一医院の定期検診で毒を注射しようとしたとのこと。
 習は暗殺を恐れ、国防部西山軍事指揮センターに身を移したといいます。
 なお暗殺実行役の譚紅は12月1日に拘束されました。

 もう一つの反日デモも疑問。
 党大会の開催を阻止しようと、政法委と薄支持勢力を中心に各地で破壊行為を作り出したとのことですが、反日デモの時点ですでに実権は孟建柱に移っていたはずですが。  
 政権側もこれを察知し、100万人もの軍、警察を動員して封じ込めたと紹介しています。
 疑わしい話ですが、私も反日デモが政法委が仕掛けたのではとか書いていましたのであまり強くは責められません。

 そして11日付太陽報は「周永康、司法機関に身柄移送か」と報道。
 実はタイトルに「伝」という文字が入っています。
 伝聞の「伝」ですね。
 つまり聞いた話ということで、日本語的には「……か」というやつです。
 「伝」さえつければ、何でも書けちゃうっていう…。

■四人組失脚以来最大の事件に

 というわけで怪しい部分も多い海外メディアの報道ですが、
 中国が公式に態度表明しないからあることないこと書かれてしまうという側面は否めません。
 通常であれば、トップクラスの失脚などという敏感な話題は即座に否定してしかるべきなのです。

 2011年の江沢民死去の誤報でも、新華社が速やかに訂正報道を出しています。
 薄熙来だって最終的には失脚しましたが、当初は「辞表は出していない」と釈明させるなど報道を否定する姿勢を見せていました。
 中国の論理でいうならば、公式決定が出るまでは「無傷」でなければならないのです。

 元政治局常務委員を失脚に追いこむというのは一大事。
 あるいは海外メディアの報道を追い風にするため、訂正報道をしていないのでは…などとも勘ぐってしまいます。

 というわけで、今度こそ本当にやばいにおいがぷんぷんする周永康関連をまとめてみました。
 実際に失脚すれば文化大革命の四人組以来最大の事件と言えるかもしれません。
 周が影響力を持っていたのは警察・司法、国有企業、石油閥というとてつもない規模なのです。
 軍・警察を管轄しクーデターをやりうる武力を持っていたという意味では、ほとんど独自の軍事力を持たなかった四人組よりも悪質とも言えるかもしれません。

◆執筆者プロフィール:水彩画(すいさいが)
中国政治ウォッチャー。ブログ「中国という隣人」を運営。葬式ウォッチなどクラシカル・スタイルの中国政治ウォッチを続けて、はや*年。不透明な中国政治を読み解こうと悪戦苦闘中。



jiji.com  (2013/12/26-19:02)
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2013122600783

習総書記、「強党路線」を誇示
=毛沢東主席生誕120周年で演説-中国

 【北京時事】
 中国の習近平共産党総書記(国家主席)は26日、毛沢東主席生誕120周年を記念し、北京の人民大会堂で開催された座談会で演説した。
 「われわれは断固として国家主権、安全、発展による利益を守り抜く」
とした上で、
 「いかなる外国もわれわれが、自らの核心的利益で取引したり、わが国の主権を損なう結果をのみ込んだりすると期待してはいけない」
と述べ、尖閣諸島をめぐり対立する日本などを念頭に、領土・主権など譲れない核心的利益で決して妥協しない「強党・強国」路線を進む方針を誇示した。

 国営新華社通信が演説全文を配信した。
 党中央は毛沢東の「功績第一、誤り第二」とする歴史的評価を堅持。
 毛をめぐる評価で世論が分裂する中、習総書記は
 「新たな情勢下でわれわれは、毛沢東思想の生きた魂を堅持・活用しなければならない」
と述べ、毛沢東の功績をたたえた。
 習氏は
 「毛同志が晩年、特に文化大革命(1966~76年)の中で重大な誤りを犯したことは否定できない
と指摘。
 しかし
 「トウ小平同志の指導の下で、われわれの党は毛同志や毛思想の歴史的地位を正しく評価した
 とも述べ、党路線の歴史的正統性を改めて確認した。
 さらに、毛沢東の旗印を掲げつつ、
 「閉鎖的で硬直したかつての道も、別の旗印に変える邪道の道も歩まない」
と述べ、中国の特色ある社会主義路線を歩む決意を示した。
 習総書記は昨年11月の就任後、「打虎」(虎退治)と呼ばれる腐敗幹部の摘発や、民衆との血肉関係を訴える群衆路線など、毛沢東を意識した政治手法を展開。
 演説でも「党の健康な体に増殖する問題は断固取り除かなければならない」と述べ、党の存続を脅かす腐敗などに危機感を示した。



 日本経済新聞 電子版  2013/12/26 23:52
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2603G_W3A221C1FF2000/

 毛沢東主席生誕120周年 習指導部、市民の郷愁警戒

 中国共産党の故毛沢東主席の生誕から26日で120周年を迎えた。
 習近平主席らは同日、最高指導部全員で毛氏の遺体を安置した天安門広場の毛主席記念堂を訪れたが、
 各地には規模の大きな行事を開かないように指導。
 格差拡大への国民の不満に警戒を強めた。

 「発展の成果を人民全体に公平に行き渡らせ、『共同富裕』の方向へと一歩ずつ歩んでいく」。
 習主席は26日、北京の人民大会堂で開いた座談会で毛語録を引用して演説。


AFP BBニュース 2013年12月26日 17:49 発信地:北京/中国
http://www.afpbb.com/articles/-/3005643

毛沢東・生誕120周年、中国世論は「過ちより功績」評価

 
●中国・北京(Beijing)の天安門(Tiananmen)に掲げられた毛沢東(Mao Zedong)中国初代国家主席の肖像と天安門(Tiananmen Square)広場を警備する警察官(2013年12月26日撮影)。(c)AFP/GOH CHAI HIN

【12月26日 AFP】中国は26日、毛沢東(Mao Zedong)初代国家主席の生誕120年を迎えた。
 記念日を前に国営紙・環球時報(Global Times)が行った世論調査では、回答者の85%以上が毛沢東について
 「犯した過ちよりも功績の方が勝る」
と考えていることが明らかになった。

 「偉大なる舵取り(Great Helmsman)」と呼ばれた毛沢東は、1949年の中華人民共和国建国の父として国民から崇拝される一方、その遺したものの受け止め方は国内でも複雑だ。
 当局は、生誕120周年の祝賀は控えめにするよう呼び掛けている。

 社会主義建設運動「大躍進(Great Leap Forward)」の失敗で数千万人が餓死したことや、
 約10年間続いた「文化大革命(Cultural Revolution)」の混迷の非は、毛沢東にあると言われている。

 中国共産党の公式見解は、1976年に毛沢東が死去して以来
 「毛沢東は7割正しく、3割は間違っていた
というものだ。
 しかし、今月23、24日に環球時報が行った世論調査の回答者は、それよりもっと好ましい見方をしているようだ。

毛沢東の功績は、毛沢東の過ちに勝ると思うか?
との問いでは、
78.3%が「そう思う」と答え、「非常にそう思う」との回答も6.8%あった
 また約90%近い回答者が、毛沢東の最大の功績として「革命を通じて独立国家を創設したこと」だと答えた。

 一党独裁の中国共産党は、27年に及んだ毛沢東時代に対する評価を厳しく検閲しており、
 毛沢東の行いに関する歴史的総括は中国国内にはいまだに存在しない。

 環球時報によれば、世代が若いほど、また高等教育を受けた人ほど毛沢東に批判的だという。
 一方、年配層や、学歴が初級・高級中学(中学、高校に相当)や職業専門校卒の人では毛沢東を尊敬する傾向が強く、こうした人々は貧富の格差が広がる中で現在ほど格差のなかった毛沢東時代への郷愁を感じているのではないかと同紙は推測している。
(c)AFP


ウォールストリートジャーナル     2013年 12月 27日 16:46 JST
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304299204579283622195811720.html?mod=WSJJP_hpp_LEFTTopStoriesSecond

習主席にとって相反する毛沢東の遺産―生誕120周年
   By     JEREMY PAGE


●毛沢東生誕120周年の記念式典に集まった人々(毛沢東の故郷、湖南省の韶山で)

 中国は26日、毛沢東生誕120周年を迎えたが、どちらかと言えば抑制的な迎え方になっている。
 これは、市場志向の経済改革を追求する中でも、革命指導者としての毛沢東のレガシー(遺産)を利用して微妙なバランスを取らねばならないという習近平国家主席(党総書記)が置かれた状況を反映している。

 国営メディアによれば、習氏と、最高意思決定機関である共産党政治局常務委員会のその他メンバー6人は北京・天安門広場にある毛主席記念堂を訪れ、安置された毛の遺体に3度拝礼した。
 その後、習氏は毛の業績に関するシンポジウムで演説し、毛の政治原則を堅持すると誓った。

 北京など中国各地での記念日行事は100周年、110周年の行事とおおむね同じだった。
 しかし今回一つ違っていた点は、日本の安倍晋三首相がよりによってこの日、戦没者を祀っている靖国神社を参拝した点だった。
 中国では、この日程上の一致を指摘し、日中両国とも「亡霊への崇拝」を選択した、と述べる人もいる。

 今年の毛沢東生誕記念日は、毛の業績をめぐり論争が再燃している中で迎えた。
 習氏は昨年11月の権力掌握以降、毛時代を想起させる言辞や戦術を多用している。

 例えば、習氏は「群衆(大衆)路線」工作を開始した。
 これは役人が公に奉仕していることを自覚させるため多数の集会に出席するよう義務付けたものだ。
 また、役人の間での「批判と自己批判」集会の慣行を復活させた。
 さらに毛時代の正史の見直しの動きに反対する姿勢を示した。
 毛時代の正史、つまり共産党の長年の正式判断は、毛は70%正しく、30%誤っていたというものだ。


●毛沢東生誕120周年を記念するパフォーマンスで人民解放軍の服を着て革命歌を歌う元女性労働者(安徽省淮北で)

 しかし同時に、共産党指導部は先月、一連の経済改革を承認した。
 これは金利の設定のほか、土地やその他資源の価格設定に際して市場原理を重視するというものだ。

 共産党の内部関係者やアナリストの中には、習氏が権力掌握後しばらく強硬な政治スタンスをとっているのは、一層の経済自由化に反対する強力な既得権益集団に挑む権限を確固たるものにするためだ、とみる向きもいる。

 だが、毛によって引き起こされた人的な災厄がどれほど大きいかをまだ共産党が認めていないと批判する声もある。
 一部の歴史家は、毛の追求した政策で3000万人以上が死亡したと推定している。
 これは主として人為的な飢饉や政治的な迫害によるという。

 毛沢東のレガシーをどう評価するかという問題は、重慶市共産党委員会書記だった薄熙来氏の失脚以来、中国ではとりわけ微妙な話題になっている。
 薄氏はかつて人気の高い党の大物で、革命歌の斉唱を通じて毛時代の精神の復活キャンペーンを主導した。

 しかし薄氏は昨年解任され、今年9月には収賄、公金横領、権力乱用の罪で無期懲役の判決を受けた。
 薄氏の妻も昨年、英国人実業家殺害の罪で執行猶予付きの死刑判決を受けた。

 こうした中で、習氏は先月、毛の生誕120周年記念行事を「厳粛、簡素、実務的に」するよう指示した。
 これは、盛大な生誕記念行事を挙行すれば、毛時代に対する批判者が反発しかねないとの懸念が党指導部内にある証拠だ、と一部の党内部関係者やアナリストはみている。

 それ以降、国営メディアは、式典が地方政府によって縮小されたところもあると報じている

 例えば、共産党機関紙系の環球時報は26日、「太陽は最も赤い。毛主席は最も親愛なる人物だ」と題する北京でのイベントは「新年祝賀会」というタイトルに変更され、ポスターから毛沢東の写真が除去されたと報じた。

 習氏は26日の毛生誕記念シンポジウムでの演説で、論議が多い1950年代と60年代の毛の活動よりもむしろ、共産党を創設して1949年の政権奪取(建国)を主導した毛の役割に焦点を当てた。

 習氏は、
 「新たな情勢の下で、毛沢東思想の生きた精神を堅持し、活用しなければならない」
と述べた。
 習氏は同時に、毛が誤りを犯したこともあったとしながらも、党はその時代の状況を踏まえて歴史的な人物を評価すべきだと強調。
 「われわれは、良好な歴史的環境の中での成功を特定の個人に帰することはできないし、逆境の中での誤りを特定の個人のせいにすることもできない」
と語った。







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