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レコードチャイナ 配信日時:2013年12月29日 8時26分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=81167&type=0
<「中華の夢」の行方(1)>
中国で相次ぐ襲撃事件、抗議運動も年間20万件―驚くべき「負の遺産」に喘ぐ
●2013年、中国で爆破襲撃事件が続発。いずれの事件も民衆の共産党独裁政権に対する鬱積した不満によるものと見られる。都市戸籍を持たない貧困層の増大、理不尽な土地収用、格差、腐敗、公害などが噴出、民衆の反発は拡大する一方だ。写真は北京天安門の検問所。
2020年代までに中国の国内総生産(GDP)は米国を抜き、世界1位に躍り出るというのが、OECDなど各種経済予測。
2050年以降には中国のGDPの世界シェアが米国の2倍以上に達し、世界全体の3割となるとの未来予測さえある。
果たして「米国との2強時代」を経て「21世紀は中国の時代」になってしまうのか。
覇権国家米国のパワーと指導力に陰りが見え始めている中、中国は経済・軍事力を不気味に拡大、習近平国家主席が唱えた「中華の夢」の実現に向け着々と邁進しているようにも見えるが、課題が噴出、乗り越えるべき高い壁が立ちはだかっている。
新たな年を迎えるに当たり、様々な角度からでこの大国の実態に迫り、その行方を占ってみたい。
(10回連載)
中国で今年10月末から11月にかけて、天安門車突入炎上事件や山西省太原市の共産党委員会庁舎での爆破事件が発生、複数の死傷者が出た。
いずれの事件も民衆の共産党独裁政権に対する鬱積した不満によるものと見られるが、事件は氷山の一角。
都市戸籍を持たない貧困層の増大、理不尽な土地収用、格差、腐敗、公害などが噴出、民衆の反発は拡大する一方だ。
◆高まる民衆の不満
天安門車突入炎上事件の背景は少数民族問題。虐げられたウイグル人たちの漢族への怒りが爆発した自爆テロと見られているが、事件の真相はいまだ謎。
中国には漢民族(全人口の92%)以外に55の少数民族があるが、中でもチベット族とウイグル族に関しては独立傾向が強い。
暴動など大規模抗争や焼身自殺事件も頻発、中国政府は特に警戒してきた。
ウイグル新疆自治区カシュガルで13年年12月に起きた警察当局と地元住民の衝突で、警官2人を含む16人が死亡した。
中国政府はイスラム教徒に恐怖心を抱いており、新疆で絶え間なく発生するウイグル族による流血事件は、北京の指導部に緊張を強いている。
09年の大規模暴動以降、新疆では経済投資と教育支援を強化する一方、治安維持で圧力をかける「アメとムチ」の政策が推進されてきた。
民間団体の調査によると、中国では年間20万件の集団抗争事件が起きており、民衆の不満と抗議は高まる一方。
こうした事件の要因の多くは、
★.個人の権利保護の欠落や
★.貧富の格差、
★.沿岸部と内陸部の格差、
★.都市と農村の格差
などである。
11月に爆破事件が起きた山西省は石炭の産地。
「石炭成金」が党幹部と結びつき、賄賂収賄などで利益を独占、炭鉱労働者を激しく搾取していた。
この「石炭成金」が山西省の統治のトップである党委書記や党委幹部と癒着しているため、党委庁舎の「信訪部(相談窓口)」への抗議や相談が殺到。
中国共産党の中央紀律検査委員会が「中央巡視組」を山西省に派遣し「山西省巡視工作動員会」を10月から11月にかけて党委庁舎で開催していた。
しかし山西省の党幹部は貧困層の来訪を力で退け、党中央に良い顔をしようとする。
陳情によって大きな混乱が生じると、地方幹部の出世に直結するためだ。
これに対する一般国民の反発・恨みは根強く、「地方政府の対応処理に問題がある」とアピールするために犯行に及んだようだ。
中国共産党の重要会議である中央委員会第三回全体会議(三中全会)が開催された11月上旬、北京市内は緊張した雰囲気に覆われていた。
天安門前の大通り「長安街」は北京以外のナンバーの車両の走行を禁じ、警官が回り道するよう求めた。
天安門広場の付近では警官が銃を携行する異様な光景も。
市中心部の地下鉄駅には警察犬も出動していた。
厳戒態勢にもかかわらず、市内の監察部前では、全国からの陳情者が集まって官僚の腐敗や強制立ち退き、公害問題を追及する抗議活動を展開。同会議初日の11月9日朝には3000人近くが押し寄せ気勢を上げた。
当局がすぐ解散させたが、社会にたまる不満の根深さをうかがわせた。
◆賄賂はGDPの12%にも
普段でも、都会の街路には随所に監視カメラが据え付けられ、見張っている。
目抜き通りには「公安」と大書きされたパトカーがひっきりなしに巡回。
日本ではフリーパスの鉄道、地下鉄などのすべての駅では改札口に警備員が立ち、空港と同様、「大型透視装置」による厳重な手荷物検査が行われている。
日本の新幹線に相当する高速鉄道では住民識別カードかパスポートがなければチケットを購入できない。
中国においては社会の安定が経済成長と並んで、中国共産党による一党支配体制の基盤とされ、治安維持に国防予算を上回る巨費が投入されている。
しかし、経済格差の拡大は党や政府の幹部の汚職とも深くかかわり、民衆の不満に直結する。
有力シンクタンクの調査によると、賄賂や贈り物、未申告の報酬などを含む灰色収入の総額は、GDPの12%にも相当するという。
習主席の腐敗撲滅運動が展開されているが、
一党独裁体制を変革しない限り抜本的な解決策にはつながらないとの見方も多い。
(Record China主筆・八牧浩行)
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レコードチャイナ 配信日時:2013年12月30日 8時30分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=81169&type=0
<「中華の夢」の行方(2)>
大都会の活況の陰で「歪」が噴出―格差・腐敗「危険ライン」に
北京、上海をはじめとする大都会は近代的ビルが林立し、地下鉄や高速鉄道の路線網も世界の都市にひけをとらない。
車内には若者が多く、携帯電話(大半がスマホ)で話す声も甲高いせいか、活気に満ちている。
市内のあちこちで大型クレーンが稼働し、ビル建設ラッシュの真っただ中。
地下鉄延伸や道路建設などインフラ工事も進んでいる。中国を訪れるたびにそのパワーアップぶりに驚かされる。
繁華街は巨大なデパートやオフィスビルが立ち並び、多くの中国人や外国人で賑わっている。
例えば北京の繁華街・王府井や上海の南京路は東京・ニューヨーク、ロンドン、パリなどの繁華街を上回るほどだ。
グッチやエルメス、バーバリーなどのブランドショップが軒を連ね、着飾った若い女性の多くがこれら欧米の有名ブランドを身に着けている。
日本をはじめ東南アジア、アメリカ、ヨーロッパ、東南アジア、アフリカ、中東…。
世界中から観光客やビジネスマンが集まっている。
世界最大の消費市場目当てに投資資金も殺到している。
一般庶民の住居地区でも、昔ながらの野菜や肉を売る店に交じって商品も日本や欧米先進国と変わらない。
食堂・レストランも外食を楽しむ人々でいっぱい。数年前に比べ、明らかに都会の一般市民の生活水準は向上していることが実感できた。
ところが、「負の遺産」も半端ではない。
日本が40年近くかけて達成した高度経済成長を、中国はわずか20年で実現。
さらに成長し続け、しかも人口、国土も日本の10倍、26倍。
さらには、1党独裁体制の弊害もあって歪が噴出している。
◆驚くべき格差の実態
第1の問題点は格差が驚くべきスピードで拡大したことだ。
所得格差を表すジニ係数は、中国政府発表で「0.474」。
★.「0.4」を越えると、所得格差から不満が高まり、社会騒乱が多発する警戒ラインとされ、
★.「0.6」を越えると、社会不安につながる危険ラインとされている。
公式発表の数字でも、既に社会騒乱多発の警戒ラインを越えているが、
中国の大学の独自調査では0.61に達しているという。
年収3千元(約5万円)以下の貧困層が、なお1億人を超える中で、
資産が1千万元(約1億6千万円)以上の富裕層は100万人。
超富裕層のビリオネア(資産10億ドル=約630億円)は300人以上に達しているというから驚きだ。
都市部では若者が運転するBMWやポルシェなど高級輸入車がわがもの顔で疾走し、自転車やリヤカーが粉塵(ふんじん)を浴びるアンバランスな光景が日常的にみられる。
実際、北京、上海、南京などでは明らかに地方からの出稼ぎ労働者がマンションなど建設ラッシュが続く開発地区で働く姿が見られたが、これら労働者の住まいは仮設のプレハブ小屋。軒先の洗濯物が寂しく風に揺れていた。
高級マンションの建設現場近くで貧しい身なりの中年女性が埃だらけになって道路清掃をしていたのも随所で目撃した。
地下鉄やバスの車内に出稼ぎの行商たちが野菜やら日常雑貨や大きく重い物を担いで乗り込んでくる。
繁華街や公園などでは露天商が焼き芋、焼き鳥などの食べ物から、装飾品、雑貨までを売っている。
税金を払わない違法行為であるため、専門の取締り人が巡回し、見つけ次第追い払っているが、露天商も生活がかかっているので必死。
すぐに別の場所に移り「営業」していた。
都市戸籍を持たない貧困層は「7億人」ともいわれ、フラストレーションを爆発させる一歩手前ともいわれる。
習近平政権は、「貧富の格差を縮める」というスローガンを掲げ、腐敗の撲滅や倹約に力を入れているが、
抜本的かつ構造的な格差是正策が打ち出されない限り、こうした危機的状況は収まりそうもない。
◆土地を奪われ立ち退きを迫られる
第2の問題点は、「法治」が著しく欠如し、市民の合法的権益が守られていないことだ。
地方政府に土地を奪われ、強制的に立ち退きを迫られたうえに、家を破壊される。
先進国では考えられないことだが、中国ではごく当たり前のことだ。
深刻な格差は体制の変革期に生じやすい。
戦後の日本やソ連崩壊後のロシアも酷い状態だったが、法整備や社会的な規制措置が講じられた結果、大きな格差は解消に向かった。
改革開放への転換から30年以上が経過した中国にとって格差是正は待ったなしの課題である。
中国指導部は、農村から都市への人口流入を促すことで内需を掘り起し、投資主導型経済から消費主導型経済への転換を図ろうとしている。
しかし、現在の土地・戸籍制度の下では、農村から都市への出稼ぎ労働者(農民工)は都市戸籍を持たないために出稼ぎ先で必要な社会保障を受けられない。
一方で、農地も自由に売買することができず、安心して都市で働き、消費を増やすことができないのが実情だ。
中国全体で「農民工は約2億人」に上るといわれる。
農地に対する農民の明確な権利が保障されていないため、地方政府が農地を収用し、開発業者に転売することで歳入を確保している。
農地を収用された農民の中には、補償が公正ではないなどとして不満も根強い。
ここ数十年間にわたる急速な都市化により、6400万世帯が土地の収用、もしくは家屋移転を余儀なくされたとされる。
◆是正策決定、既得権益の壁打破できるか
「明」と「暗」がこれほど際立った国は世界に見当たらず、
習近平政府も「格差是正は待ったなしの最優先課題」と危機感を隠さない。
13年11月の三中全会で戸籍制度、土地改革、一部セクターの民間・外資への開放など具体的な改革方針を打ち出した。
土地などこれまで「集団所有」が原則とされてきた農村の資産を、農民に株式の形で分け与えることを可能にした。
株の譲渡や相続を認めることで、個人の財産に近い権利として使える道を開いた。
都市開発に伴う土地の値上がり益を、農民に公平に分け与えることも打ち出した。
これにより都市開発の際には地方政府が強制的に収用した上で、転売益を独占する行為の抑止を狙った。
一方で、農民が圧迫される原因となっていた地方政府の財政難を解消するため、地方の財源として不動産税や消費税の導入・拡大を盛り込んだ。
社会保障や大規模プロジェクトなどの費用も中央が一部負担することで、地方の財政難を解決する姿勢を示した。
このほか、「国家の統治システムと統治能力の現代化」を推進し、「腐敗」党員を取り締まる党中央規律検査委員会の権限を強化し監視を強める。
司法改革では、警察が裁判を経ずに実質的な懲役刑を科してきた労働教養制度は廃止される。
習近平体制がこの方針に沿って岩盤のように強固な既得権益層を打ち砕き、様々な改革を断行できるか、まさに正念場だ
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レコードチャイナ 配信日時:2013年12月31日 7時3分
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<「中華の夢」の行方(3)>
環境汚染で滅ぶ?
―「PM2.5」「がん村」の恐怖、「近海から魚が消えた」
●「世界最大の公害発生国」である中国が及ぼす地球生態系への影響は想像を絶する。
中国では有害化学物質による水質汚染や大気汚染など環境関連事件が多発、深刻な健康被害が続出している。写真は広東省スワトウ市貴嶼村の汚染された川。
「世界最大の公害発生国」である中国が及ぼす地球生態系への影響は想像を絶する。
中国では有害化学物質による水質汚染や大気汚染など環境関連事件が多発、深刻な健康被害が続出している。
◆工場からの排水で褐色に濁る
中国・江蘇省のある村は、伝統的な稲作地域として有名で水資源が豊かなことから「水の郷」と呼ばれていた。
しかし、今その面影はなかった。
2004年頃、このあたりは地方政府によって「ステンレスの街」と定められ、民家だった場所は、ほとんどがステンレス工場へと変わった。
工場では金属部品を分解してステンレスを取り出す作業が行われ、無防備にも煙を直接吸い込んでいる。
工場からの排水により、川面は褐色に濁り、油のようなものが水面に浮いているのが見える。
ステンレス工場群が建設されてから健康被害を訴える近隣住民が急増。
そこで原因と疑われる汚染水を垂れ流す金属工場を相手に地元住民が訴訟を起こした。
その結果、工場は賠償金を支払い、住民を3~4キロ離れた別の地域へ移住させた。
この村の人口は約3千人。
2011年までの2年間、がん患者は80人に達し、「ガンの村」と言われるようになった。
ガンの発症率が多い、いわゆる「ガン村」の存在を中国政府は13年に入り、公式に初めて認めた。
外国調査機関によると、その数は少なくとも400カ所を超えるという。
中国の工業生産の急拡大につれて、がん患者数が急増しているのは事実だ。
中国でのがんによる死亡者数の統計を見ると、
★.70年代には年間平均で70万人にとどまっていたものが、
★.90年代に年間117万人に急増。
★.2012年には270万人とさらに増え、
★.2020年には400万人を超えると予想
されている。
中国漁船が東シナ海の尖閣諸島海域で海上保安庁の巡視船に衝突した事件が2010年9月に勃発した。
尖閣海域では中国から来た多数の漁船が操業しており、このうち日本の領海で操業していた中国漁船が巡視船に追われ体当たりしたのだ。
この船も含めた漁船群は尖閣海域から170キロも離れた福建省福州から長い時間をかけてやってきた。
燃料コストと拿捕の危険を冒して尖閣海域に来て操業するのは何故か?
◆近海では魚獲れず尖閣へ―湖・川でも魚が大量死
中国八大漁場の一つに数えられるほど、豊かな漁場に近い江蘇省のある漁港。
ここではヒラメやクルマエビなど国内販売用の海産物が水揚げされている。
漁師は早朝6時に出発。3時間かけて目的の漁場へ。
到着するとすぐに仕掛け網を海の中に投げ入れる。
その長さは、ざっと2000m。
網を仕掛けてからおよそ6時間。
潮が引いた状態で網の中身を確認すると小さなヒラメが数えるほど。
この道30年という漁師は、
「昔は中には3キロくらいの大きなものが沢山獲れた。
ヒラメはとても高く売れるので大きな収入が得られたが、最近は全く獲れない」
と嘆く。
「完全な赤字だ。
海が汚染されているためだ。
汚染されて魚が近くまで来なくなった。
しかもここで獲れた魚はほかの地域に比べて3分の1の値段しかつかない」
と嘆く。
「豊かな漁場」はなぜ汚染されたのか?
その原因を問うと漁師は港から望める大きな化学工場群を指差した。
無数の煙突からは灰色の煙がもくもく出て空を圧倒している。
漁師たちによると6年前、漁場からわずか2キロの距離に100社もの化学工場が操業を始めた。
しかも、これら工場のうち9割が廃水を海に直接排水しているといわれ、その汚染された水が海に垂れ流されている。
漁師たちは
「化学工場の稼働と時を同じくして漁獲量が激減してしまった」
と強く訴え、漁師たちは政府に改善を求め何度も直訴した。
しかし地方役人からの返答は
「貧乏で死ぬより豊かになるなら汚染されて死んだ方がましだろ」
の一言。
地方政府は地方経済の発展を優先し漁師たちの訴えを無視した。
ある漁師は
「政府は化学工場から税金をもらっているので何も改善しない」
「工場のせいでさらに遠くまで漁に出なくては生活できなくなった」
と憤っている。
そこで東シナ海や黄海のはるか遠方にまで、漁船が繰り出すことになる。
上海では尖閣諸島海域で獲れた魚が人気の的。
スーパーなどで売りに出されると市民が殺到。
通常の1.5倍もの高い売値にもかかわらずサワラやウマズラハギなどがあっという間に完売する。
中国では淡水魚が主に食べられてきた。
漁業関係者によると
「中国人の好きな淡水魚が川や湖の水質汚染で食べられなくなったため、海鮮魚が高く売れるようになった」
という。
中華料理で魚と言えば鯉、ナマズ、ドジョウなど淡水魚だったが、中国の湖・池・川で魚の大量死が発生する事例は後を絶たない。
そこで高い金を出してでも魚介類を食べたい富裕層が注目したのが「海鮮」。
富裕層は新鮮な海産物を求めるため価格が高騰。
漁師たちには一攫千金のチャンスとなる。
ところが汚染のため中国近海では魚が取れないのが実情。
そこで中国の漁師たちは、より遠くの海にその活路を求めたというわけである。
2013年12月、中国東部を中心に有害物質を含んだ濃霧が発生。
上海市では大気中の微小粒子状物質「PM2.5」を含む大気汚染指数が6段階のうち最悪から2番目の「重度汚染」となった。
北京でも「PM2.5」が日本の環境基準の13倍にあたる450を超えたほか、周辺の河北省や山西省など各地で、500を超える深刻な汚染が見られた。
一部の都市では、高速道路の通行規制や工場の操業の一時停止、それに市内へのトラックの乗り入れ規制などの緊急対策を発動したが、「焼け石に水」の状態だ。
中国経済計画当局は、2011年から15年までの第12次5カ年計画の環境浄化目標の半分も達成していないと報告。
窒素酸化物の排出量は10年から12年の間に2.8%増加。
5カ年計画では15年までに10%に減らすことを目標としているが、早くも達成は困難視されている。
民間シンクタンク幹部は
「老朽化した製鉄所、火力発電所、セメント工場を廃棄するという過去2年間の全国的なキャンペーンにもかかわらず、工業改革のペースが不十分。
このままでは環境汚染によって国は滅びてしまう」
と警告している。
』
【注】
2,3年前のニュースに瀬戸内海で魚の水揚げが減り、形も小ぶりになってしまい、大阪漁連は頭を抱えている、というニュースがあった。
原因は、瀬戸内海があまりにきれいになり、プランクトンが生育できず、それにつれて魚も小さく、そして数も減ってしまったためだという。
いわく「水清ければ魚棲まず」ということらしい。
『
レコードチャイナ 配信日時:2014年1月1日 7時42分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=81230&type=0
<「中華の夢」の行方(4)>
中国経済は20年代に米国を超え、50年には日本の10倍に!?―課題も山積
●2020年代までに中国のGDPは米国を抜き、世界1位に躍り出るというのが、各種機関の中期経済予測。2050年にはGDPの世界シェアが米国の2倍弱に達し、世界全体の3割となるとの未来予測さえある。写真はニューヨーク・タイムズスクエアの中国の広告。
2014年初め、「未来予測」が大流行である。
20年代までに中国の国内総生産(GDP)は米国を抜き、
世界1位に躍り出るというのが、OECD、IMFなど各種機関の中期経済予測。
2050年には中国のGDPの世界シェアが米国の2倍弱に達し、世界全体の3割となるとの未来予測さえある。
この時点で日本のGDPの10倍を超えるという。
10年に日本を追い抜き世界第2の経済大国に躍り出た中国は12年時点でGDPで日本を40%も上回った。
英エコノミスト誌が編集した「2050年の世界」によると、
2050年に世界全体の中で占めるGDPシェアは
●.中国が30%、
●.米国は18%に縮小、
●.日本はわずか3%
にとどまるというから衝撃的だ。
英スタンダードチャータード銀行が、13年11月に発表した「中国の経済発展予測」によると、中国の経済成長率について、2013年から20年までは毎年平均で7%の増加を維持すると予測。
中国のGDPは22年にアメリカを超えて世界最大となる。
中国は改革開放路線に転換した1978年から2012年にかけて、年平均10%に迫る高度経済成長を達成した。
「決められない政治」の日米欧先進国が景気変動を繰り返す中で、「国家市場原理」と「特色ある社会主義」を旗印に、奇跡的な経済パフォーマンスを実現。
GDPは10年ごとに4倍ずつ拡大した。
中国政府系シンクタンクの国務院発展研究センターが13年末にまとめた「中国経済成長の10年展望」は、中国は9年後の2022年に、名目国内総生産(GDP)で米国を追い抜き、世界最大の経済大国になると予測。
中国のGDP規模が10年の5兆9千億ドルから、20年には21兆ドルと4倍近くに膨張する。
この年の米国の23兆4千万ドルに迫り、22年にも米国を抜き去るというシナリオだ。
同報告書は今後7~8%成長を続けた後、成長率を下げ、22年に5.8%との数字をはじき出している。
経済成長パターンを「世界の工場」と呼ばれた製造業中心から、「世界の市場」に変身しつつ、小売業やサービス業、金融など国内需要を伸ばして拡大すると予測している。
また、乗用車の普及や都市化などにより個人消費が拡大。
10年に4428ドルだった1人当たりGDPは13年に名目で6825ドル。
これが17年には個人消費が爆発的に伸びるとされる節目の1万ドルを突破して1万951ドルに。20年に1万5300ドル、米中逆転を実現する22年には1万8747ドルと加速度的に増え、韓国、台湾など先進国の水準に近づくという。
この時点で中国の総人口は現在より1億人以上多い14億7830万人と見込んでいる。
楽観的なシナリオに過ぎるきらいがあるものの、中国は共産党独裁政権ならではの早い決断、インフラ投資など景気浮揚策発動で、「中長期計画」をことごとく達成してきた実績もある。
◆世界最大の消費大国、車販売3000万台へ
中国は安定成長軌道への軟着陸を模索するが、高い壁が立ちはだかっている。
中国経済の主要けん引役である輸出は、最大の貿易相手である欧州の景気後退など世界経済の低迷を受けて失速。
東南アジアや米国向けの輸出増を目指すものの、先行きも楽観できない。
鉄鋼や造船など生産能力の過剰を抱える製造業は輸出増を見込んで生産した製品が売れず、在庫が積み上がっている。
しかし、内陸部にも自動車やデジタル機器が広がり、個人消費は意外に底堅い。
13年の自動車販売台数は約2000万台に達し、断トツの世界一。
数年後には3000万台を超えると予想されている。
Web人口が6億人に達する中国でのパソコン、スマホ市場も拡大する一方だ。
習政権は多くの関係組織を総動員し、経済成長を多少抑えても所得格差是正、国有企業民営化、汚職・腐敗の解消、情報統制の緩和、政治改革(民主化)など最優先政策課題に取り組む方針だが、富裕層、既得権益層の抵抗が強く、実現は至難の業。深刻化する大気汚染など社会的な歪は増大する一方で、国民の不満は高まっている。
これらの課題をクリアできなければ、中間層が拡大せず、消費が伸び悩む一方、企業経営の効率化が阻害され、企業の採算性も悪化する。
さらには企業の国際競争力が低下し、貿易赤字国に転落。
その結果、経済成長率が低下してしまう最悪シナリオもありうる。
日本の在中国大使館の経済参事官を12年6月まで4年間務めた柴田聡・財務省理財局調査室長は
「中国では欧米や日本とは全く異なり、経済活動への国家の関与が可能。
目標を設定したら達成が至上命題となり、必ず実現してしまう。
大都市でも必要なインフラが未整備なところが多く、地方へ行けば全く手つかずの状態。
投資対象は多く財政にゆとりがあるので、引き続き投資でそれなりの成長率をたたき出すことは可能」
と強調。
人口がピークに達し成長鈍化につながるとの見方についても、
「生産人口の減少スピードは巷間言われているより緩やかで、内陸部の農民出身の若者が、沿岸部から出身地に近いところに戻っている」
とピークアウトは後ずれすると分析している。
中国は「メード・イン・チャイナ」の豊富で安い労働力を武器に世界市場を席巻し、1993年~2007年に年平均で2ケタの経済成長率を記録した。
しかし賃金上昇に伴って輸出が減り、08年のリーマンショック後の大型公共投資で膨れ上がった不動産バブルの後遺症も深刻化している。
中国経済が大きな転換点を迎えているのも事実だ。
◆「中国経済崩壊説」は杞憂!?
13年春に日本の一部メディアを中心に喧伝された「7月バブル崩壊説」が杞憂に終わった背景には、金融危機に見舞われた米国や日本と違う中国の特殊要因があるとみる向きも多い。
最大手の中国工商銀行など国有商業銀行は2006年以来の上場で経営体力を備えており、「不良債権を独自に償却する余力が十分ある」という。
シャドーバンキングが売っている「理財産品」(高利回り投資商品)も投資家に金利だけ支払えば不良債権化せず「自転車操業を続けることも可能」といわれる。
13年3月末で過去最高の3兆4400億ドル(約340兆円)もの外貨準備を保有する中国では、「地方政府がデフォルトに陥っても、中央政府の鶴の一声で債務処理が可能」となる。
IMF(国際通貨基金)によると、中国の公的債務のGDP比率は昨年末で22%にすぎない。
日本の236%、米国の107%という財政状況に比べ、格段に健全だ。
安定成長軌道に乗りつつある中国経済だが、なお不透明部分は多い。
その行方は世界経済に大きな影響を与えるだけに、冷静かつ深い洞察力を駆使して注視する必要がある。
(Record China主筆・八牧浩行)
』
2,3年前のニュースに瀬戸内海で魚の水揚げが減り、形も小ぶりになってしまい、大阪漁連は頭を抱えている、というニュースがあった。
原因は、瀬戸内海があまりにきれいになり、プランクトンが生育できず、それにつれて魚も小さく、そして数も減ってしまったためだという。
いわく「水清ければ魚棲まず」ということらしい。
『
レコードチャイナ 配信日時:2014年1月1日 7時42分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=81230&type=0
<「中華の夢」の行方(4)>
中国経済は20年代に米国を超え、50年には日本の10倍に!?―課題も山積
●2020年代までに中国のGDPは米国を抜き、世界1位に躍り出るというのが、各種機関の中期経済予測。2050年にはGDPの世界シェアが米国の2倍弱に達し、世界全体の3割となるとの未来予測さえある。写真はニューヨーク・タイムズスクエアの中国の広告。
2014年初め、「未来予測」が大流行である。
20年代までに中国の国内総生産(GDP)は米国を抜き、
世界1位に躍り出るというのが、OECD、IMFなど各種機関の中期経済予測。
2050年には中国のGDPの世界シェアが米国の2倍弱に達し、世界全体の3割となるとの未来予測さえある。
この時点で日本のGDPの10倍を超えるという。
10年に日本を追い抜き世界第2の経済大国に躍り出た中国は12年時点でGDPで日本を40%も上回った。
英エコノミスト誌が編集した「2050年の世界」によると、
2050年に世界全体の中で占めるGDPシェアは
●.中国が30%、
●.米国は18%に縮小、
●.日本はわずか3%
にとどまるというから衝撃的だ。
英スタンダードチャータード銀行が、13年11月に発表した「中国の経済発展予測」によると、中国の経済成長率について、2013年から20年までは毎年平均で7%の増加を維持すると予測。
中国のGDPは22年にアメリカを超えて世界最大となる。
中国は改革開放路線に転換した1978年から2012年にかけて、年平均10%に迫る高度経済成長を達成した。
「決められない政治」の日米欧先進国が景気変動を繰り返す中で、「国家市場原理」と「特色ある社会主義」を旗印に、奇跡的な経済パフォーマンスを実現。
GDPは10年ごとに4倍ずつ拡大した。
中国政府系シンクタンクの国務院発展研究センターが13年末にまとめた「中国経済成長の10年展望」は、中国は9年後の2022年に、名目国内総生産(GDP)で米国を追い抜き、世界最大の経済大国になると予測。
中国のGDP規模が10年の5兆9千億ドルから、20年には21兆ドルと4倍近くに膨張する。
この年の米国の23兆4千万ドルに迫り、22年にも米国を抜き去るというシナリオだ。
同報告書は今後7~8%成長を続けた後、成長率を下げ、22年に5.8%との数字をはじき出している。
経済成長パターンを「世界の工場」と呼ばれた製造業中心から、「世界の市場」に変身しつつ、小売業やサービス業、金融など国内需要を伸ばして拡大すると予測している。
また、乗用車の普及や都市化などにより個人消費が拡大。
10年に4428ドルだった1人当たりGDPは13年に名目で6825ドル。
これが17年には個人消費が爆発的に伸びるとされる節目の1万ドルを突破して1万951ドルに。20年に1万5300ドル、米中逆転を実現する22年には1万8747ドルと加速度的に増え、韓国、台湾など先進国の水準に近づくという。
この時点で中国の総人口は現在より1億人以上多い14億7830万人と見込んでいる。
楽観的なシナリオに過ぎるきらいがあるものの、中国は共産党独裁政権ならではの早い決断、インフラ投資など景気浮揚策発動で、「中長期計画」をことごとく達成してきた実績もある。
◆世界最大の消費大国、車販売3000万台へ
中国は安定成長軌道への軟着陸を模索するが、高い壁が立ちはだかっている。
中国経済の主要けん引役である輸出は、最大の貿易相手である欧州の景気後退など世界経済の低迷を受けて失速。
東南アジアや米国向けの輸出増を目指すものの、先行きも楽観できない。
鉄鋼や造船など生産能力の過剰を抱える製造業は輸出増を見込んで生産した製品が売れず、在庫が積み上がっている。
しかし、内陸部にも自動車やデジタル機器が広がり、個人消費は意外に底堅い。
13年の自動車販売台数は約2000万台に達し、断トツの世界一。
数年後には3000万台を超えると予想されている。
Web人口が6億人に達する中国でのパソコン、スマホ市場も拡大する一方だ。
習政権は多くの関係組織を総動員し、経済成長を多少抑えても所得格差是正、国有企業民営化、汚職・腐敗の解消、情報統制の緩和、政治改革(民主化)など最優先政策課題に取り組む方針だが、富裕層、既得権益層の抵抗が強く、実現は至難の業。深刻化する大気汚染など社会的な歪は増大する一方で、国民の不満は高まっている。
これらの課題をクリアできなければ、中間層が拡大せず、消費が伸び悩む一方、企業経営の効率化が阻害され、企業の採算性も悪化する。
さらには企業の国際競争力が低下し、貿易赤字国に転落。
その結果、経済成長率が低下してしまう最悪シナリオもありうる。
日本の在中国大使館の経済参事官を12年6月まで4年間務めた柴田聡・財務省理財局調査室長は
「中国では欧米や日本とは全く異なり、経済活動への国家の関与が可能。
目標を設定したら達成が至上命題となり、必ず実現してしまう。
大都市でも必要なインフラが未整備なところが多く、地方へ行けば全く手つかずの状態。
投資対象は多く財政にゆとりがあるので、引き続き投資でそれなりの成長率をたたき出すことは可能」
と強調。
人口がピークに達し成長鈍化につながるとの見方についても、
「生産人口の減少スピードは巷間言われているより緩やかで、内陸部の農民出身の若者が、沿岸部から出身地に近いところに戻っている」
とピークアウトは後ずれすると分析している。
中国は「メード・イン・チャイナ」の豊富で安い労働力を武器に世界市場を席巻し、1993年~2007年に年平均で2ケタの経済成長率を記録した。
しかし賃金上昇に伴って輸出が減り、08年のリーマンショック後の大型公共投資で膨れ上がった不動産バブルの後遺症も深刻化している。
中国経済が大きな転換点を迎えているのも事実だ。
◆「中国経済崩壊説」は杞憂!?
13年春に日本の一部メディアを中心に喧伝された「7月バブル崩壊説」が杞憂に終わった背景には、金融危機に見舞われた米国や日本と違う中国の特殊要因があるとみる向きも多い。
最大手の中国工商銀行など国有商業銀行は2006年以来の上場で経営体力を備えており、「不良債権を独自に償却する余力が十分ある」という。
シャドーバンキングが売っている「理財産品」(高利回り投資商品)も投資家に金利だけ支払えば不良債権化せず「自転車操業を続けることも可能」といわれる。
13年3月末で過去最高の3兆4400億ドル(約340兆円)もの外貨準備を保有する中国では、「地方政府がデフォルトに陥っても、中央政府の鶴の一声で債務処理が可能」となる。
IMF(国際通貨基金)によると、中国の公的債務のGDP比率は昨年末で22%にすぎない。
日本の236%、米国の107%という財政状況に比べ、格段に健全だ。
安定成長軌道に乗りつつある中国経済だが、なお不透明部分は多い。
その行方は世界経済に大きな影響を与えるだけに、冷静かつ深い洞察力を駆使して注視する必要がある。
(Record China主筆・八牧浩行)
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