●中国国営の中国中央テレビ局(CCTV)が放映した、無人月探査機「嫦娥3号」が撮影した無人月面探査車「玉兎号」の画像〔AFPBB News〕
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JB Press 2013.12.27(金) The Economist
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39555
権力と愛国心:月に手を伸ばすような壮大な野望
(英エコノミスト誌 2013年12月21・28合併日号)
習近平氏は急ピッチで権力基盤を固めた。
そして今、その力を見せつけている。
中国のある新聞が書いたように、それは「チャイニーズドリーム(中国夢)の新たな幕開け」だった。
12月15日、中国メディアの評論家の頭の中には、1969年にニール・アームストロング船長のブーツが月面に残した跡にほぼ匹敵するようなイメージがあった。
1976年以降初めて母船の宇宙探査機が月面への軟着陸を成し遂げた後で、中国の月面探査車「玉兎(ぎょくと)号」が月の埃を削った「中国の足跡」がそれだ。
地上管制センターにいた習近平国家主席は、その画像がスクリーンに映し出されると、手を叩いた。
チャイニーズドリームの旗振り役として、それは大切な瞬間だった。
■強い国家と強い軍を目指すチャイニーズドリーム
習氏は2012年11月に政権の座に就いた数日後に「チャイニーズドリーム」というスローガンを打ち出した。
それ以降、スローガンは中国全土に広まり、広告看板やプロパガンダ用のポスターなど、至る所で見られるようになった。
習氏が権力掌握を強めた先月の中国共産党中央委員会全体会議で採択された決議には、このスローガンが2回取り上げられている。
習氏は、チャイニーズドリームには「強い国家の夢」と「強い軍の夢」が含まれると述べており、特に全体会議以降は、絶対的指導者のイメージを強調してきた。
地域における中国の一部行動も、ますます強硬になっているようだ。
12月5日、中国海軍の艦船が南シナ海で、米国の巡洋艦と異常接近する緊迫した局面があった。
双方とも当初は沈黙を保ち、米政府高官が米巡洋艦カウペンスが中国艦船との衝突を避けるために回避行動を余儀なくされたことを明らかにしたのは、1週間以上経過した後だった。
(カウペンスが回避行動を取った後、中国艦船は前方を通過した)
この事態は、米国の巡洋艦が中国唯一の新しい空母「遼寧」を監視していた際に起きた。遼寧は、対立する領有権主張に引き裂かれる海域に処女航海を行うところだった。
(遼寧は、9月に発行された4種類の「チャイニーズドリーム」記念切手の絵柄の1つとなっている。あと2枚は中国の宇宙船、もう1枚は深海潜水艦が描かれたもの)
米国は、国際水域でのニアミスについて中国に抗議した。
しかし中国の新聞は、カウペンスが「中国の国家安全保障」を脅かしたと非難した。
このニアミスは、中国が重要な貿易ルートである南シナ海を自国の裏庭として主張しようとしているとの米国の懸念を高めるだろう。
海上でのニアミスは、東シナ海の空域を通過するすべての航空機に対して中国当局への通告を求める「防空識別圏」の設定が11月23日に発表された後に起きた。
防空圏設定は、圏内の島嶼を施政下に置いている日本を激怒させ、米韓をはじめとする他の国々から非難された。
米国のジョン・ケリー国務長官は12月16日、訪問先のハノイで、中国の防空識別圏の設定は「危険な誤算や事故」のリスクを高めたと発言した。
見たところ中国は防空圏をあまり強制していないようだが、中国国内の国家主義者たちはこの動きを歓迎した。
ケリー氏の発言があった日にジャカルタにいた中国国防相の常万全氏は、防空識別圏を批判する向きがやっていることは「百害あって一利なし」と語った。
「チャイニーズドリーム」という表現は、宇宙船「嫦娥(じょうが)3号」が月面着陸し、側面に中国の国旗を掲げた探査車「玉兎」が母船から無事に配備された模様を伝える中国の報道を埋め尽くした。
習氏は今年6月、地球の軌道上を回る3人の宇宙飛行士とのテレビ放映された通話の中で、
「宇宙の夢は強い国家という夢の重要な要素だ」
と語った。
中国のミニブログでは、ソ連と米国がはるか昔に達成した偉業を再現することの無意味さについてささやかれていたが、習氏は歴代の前任者と同様、月にこだわっているように見える。
中国人民解放軍の主要機関紙「解放軍報」は、中国人がいつ月面着陸を果たすのか、正確に述べることは難しいが、中国の宇宙飛行士は「過去に例を見ないスピードでこの目標に向かっている」と述べている。
■粛清の衝動
北京では、汚職などの容疑で前政治局常務委員の周永康氏を自宅軟禁下に置いたことで、習氏が政治的な力を誇示しているとの噂が飛び交っていた。
ニューヨーク・タイムズ紙は12月5日、周氏はこれほど高い地位にあった人物としては1949年に共産党が政権に就いて以来初めて、汚職容疑で公的な取り調べを受けることになったと報じた。
また同紙は、習氏と他の主導者が12月初めに捜査の決断を下していたとする匿名の情報筋の話を引用している。
周氏は、習氏の国家主席就任と同時に国内治安機関のトップとしての職位を退くまで、絶大な権力を振るっていた。
また周氏は、汚職と職権乱用の罪で9月に無期懲役を言い渡された元政治局員の薄熙来氏の擁護者だと広く考えられていた。
■壮大な夢と悪夢
だが、習氏はふだん自信たっぷりに見えるものの、最近の宣伝攻勢は、共産党上層部にいまだ広がる不安感を露呈させた。
12月初旬、党機関紙は、諸外国の独裁体制の無秩序な崩壊から教訓を引き出すよう中国人に呼びかける匿名のインターネット上の投稿を称賛し始めた。
この記事は「祖国がなければ、あなたは何者でもない」と題した投稿で
「我々は第2のリビアになりたくはないから、習国家主席を支持する」
と述べている。
ミニブログでは揶揄されもしたが、一部国営企業の従業員はこれについて研究するよう迫られた。
どうやら、習氏が抱く未来の輝かしい夢は、悪夢のようなバージョンと交互に入れ替わるようだ。
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英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
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ウォールストリートジャーナル 2014年 1月 28日 11:42 JST
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304461804579347570868270250.html?dsk=y
中国の月探査車「玉兎」、命絶える?
By JOSH CHIN
●各国の探査車の寿命
中国の月探査車は、「玉兎」という名前が示すほど活動的でも長命でもないようだ。
「玉兎」という名称は、月には不老不死の薬を作っているウサギがいるという中国の言い伝えにちなんで付けられた。
しかし国営新華社通信が週末報じたところによると、月探査車「玉兎」は、「複雑な月面環境」による機械的な異常に見舞われた。
無人月探査機(嫦娥3号)が天体の軟着陸に中国として初めて成功したことを受け、昨年12月15日に稼働し始めた探査車の玉兎は、宇宙分野で米国やロシアとの差を縮めるという中国の野心的な計画で中心的な役割を担っていた。
公正を期すために言うと、玉兎は永続的に稼働し続けるようには作られていない。
月面を動き回るのはたった3カ月間で、その後永遠の眠りにつくよう設計されている。
そうだとしても、玉兎のミッションが本来の寿命より1カ月以上早く終了した可能性があることは、多くの中国国民を落胆させている。
新華社は、身動きが取れなくなった月探査車にインターネットユーザーが同情を示していると報じた一方で、中国の宇宙開発当局への当てつけともとれるようなコメントをした。
玉兎が困難に直面したと発表した日が、米航空宇宙局(NASA)の探査車「オポチュニティ」が火星に着陸してからちょうど10周年に当たると指摘したからだ。
新華社は
「オポチュニティが火星に10年滞在していることと比較すると、玉兎の滞在1カ月は長くない」
と述べた。
オポチュニティが10年も探査を続けているということなので、われわれは玉兎の寿命が他の無人探査車と比較してどれほど長いのかを調べてみた。
チャートで分かる通り、中国の探査車の寿命は、目的地に到着した探査車の中であまり長くないように見える。
中国がもし玉兎を復活させることができれば、米国の「ソジャーナ」を超えられるだろう。
ソジャーナは2カ月20日間火星を探査し、NASAとの連絡を絶った。
しかし、それでもソ連初の月探査車「ルノホート1号」には遠く及ばない。
ルノホート1号は1970年11月17日に月に着陸し、9カ月半稼働した。
一方で、中国は探査車の着陸という点で1勝0敗という「全勝」記録を持つ。
英国は2003年に火星探査車「ビーグル2号」を失っているほか、ソ連は1969年から1977年の間に5つの探査車を失ったか、打ち上げで失敗した。
中国はまた、米国と違い、宇宙計画に投じられる資金が増え続けているという点で有利だ。
米国は過去数年間、NASAの予算を事実上横ばいに抑制している。
ただし、中国の増えた資金が効果的に使われるかどうかは別の問題だ。
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CNN ニュース 2014.01.28 Tue posted at 10:09 JST
http://www.cnn.co.jp/fringe/35043090.html?tag=cbox;fringe
中国の月探査機にシステム異常、夜間に「凍死」の恐れ
(CNN) 中国が月面に着陸させた探査機「玉兎(ぎょくと)号」がトラブルに見舞われ、故障したまま復旧できない可能性も出てきたことが28日までに分かった。
国営新華社通信が伝えた。
玉兎号は昨年12月に着陸機「嫦娥(じょうが)3号」と共に月面に着陸。
3カ月かけて月面を探査する予定だった。
しかし新華社によると、機械制御システムに異常が見つかり、担当者が夜を徹して修理を試みたものの、このまま月の夜に入れば復旧できなくなる可能性があるという。
月の夜は地球時間で約14日間続き、月面の温度はマイナス180度にまで低下する。
この環境で持ちこたえるためには「冬眠状態」に入って電力を節約する必要があるが、故障でうまく冬眠ができなければ、そのまま「凍死」する恐れがある。
玉兎号、嫦娥3号とも、12月下旬から1月第2週まで続いた月で最初の夜は切り抜けていた。
嫦娥3号は24日から無事に冬眠状態に入り、あと1年は正常に動作できる見通し。
新華社通信は玉兎号自身の声を伝える形で、
「もし私が修理できなかったら、みんなで嫦娥をなぐさめてあげて」
と呼びかけ、
「太陽が沈み、温度は急速に下がっている。
でも私はそれほど悲しいとは思わない。
これが私の冒険物語で、どんなヒーローにもあるように、ちょっとした問題に突き当たった」
「地球よ、おやすみ。人類よ、おやすみ」
と締めくくった。
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