●貿易に依存する中国だが、本格的な戦いになれば、海上を支配している米国は中国の貿易を遮断することができる〔AFPBB News〕
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JB Press 2013.12.05(木) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39362
中国は帝政ドイツの過ちを繰り返してはならない
(2013年12月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
台頭著しい専制国家とそれに比べれば経済に衰えが見える民主主義国家との緊張をうまく管理しながら、開かれた世界経済を維持することはできるのだろうか?
この問いは19世紀の後半、帝政ドイツが欧州一の経済・軍事大国にのし上がる際に示されたものだ。
現在、これと全く同じ問いが、共産主義国家・中国の台頭を受けて浮上している。
かつてと同様に不信感が強まっており、かつてと同様に新興の大国の行動が紛争のリスクを高めているのだ。
この物語が1914年にどのような結末を迎えたかは周知の通りだ。新しい物語はその100年後に、果たしてどんな結末を見せるのだろうか。
■明らかに挑発的な防空識別圏の設定
中国が先日、日本が現在支配している無人の島々(日本では尖閣諸島、中国では釣魚島と呼ばれている)の上空を含む空域に「東シナ海防空識別圏」なるものを設けることを決めたことは、明らかに挑発的だ。
両国の防空識別圏が互いに重なり合うことになるからだ。
日本も韓国もこの新しい防空識別圏を承認していないが、中国はこれを守る構えのようだ。
米国もこの防空識別圏を認めておらず、紛争時には日本を支援する義務を条約により負っている。
ただ米国務省は、無辜の乗客の命を危険にさらすことを避けるために、米国の民間航空会社が中国の要請に従うことを「期待する」とも述べている。
つまり、米国のシグナルは曖昧である。
このような状況では普通に見られることだが、かつて米国の太平洋軍司令官を務めたウィリアム・ファロン氏が述べているように、中国の防空識別圏の設定によって、偶発的な紛争が生じる危険性は高まっている。
もし中国と日本の軍用機が撃ち合う事態になったら、一体どうなるのだろうか?
もし中国の軍用ジェット機が民間機を銃撃したり着陸を強制したりすることになったら、一体何が起こるのだろうか?
米国が発した曖昧なシグナルは、紛争のリスクをむしろ高めているのかもしれない。
■今の中国と帝政ドイツ台頭との類似点
第1次世界大戦が始まった時のことからも分かるように、一見些細な出来事があっという間にとてつもない大事(おおごと)にエスカレートすることがある。
欧州はあの戦争の被害から立ち直ることができなかったし、その25年後にはもっとひどい戦争を引き起こしてしまった。
翻って今日では、強気なナショナリストの習近平氏が中国を率い、それに負けないくらい強気なナショナリストの安倍晋三氏が日本を率い、さらには米国が条約で日本の防衛を約束していることから、破滅的な紛争が勃発するリスクが再び生じている。
そのような事態は決して不可避ではなく、現実のものとなる公算も小さい。
だが全くあり得ないとも言い切れず、現実化の可能性は1カ月前よりも高まっている。
帝政ドイツが台頭した時との類似点はほかにもある。
帝政ドイツは20世紀の初めに、海軍力の強化で英国と競い始めた。
1911年には、フランスがモロッコに介入したことを受けて砲艦1隻をモロッコに派遣した。
フランスと英国の関係を試すこともその狙いの1つだった。この一件により、フランスと英国の関係は強化された。
これと同様に、中国の今回の行動は一方では日本と韓国の、他方では日本と米国の関係を強化する公算が大きい。
また当時の英国がそうだったように、今日の米国は、この地域で影響力を行使したい中国がもたらす難題にますます悩まされている。
中国の国家主席はなぜこのような挑発的な行動を取るのだろうか?
習近平氏は国内での立場を強化しているように見えるため、恐らく意識したうえでこの決断を下したのだろう。
恐らく、同様な行動をさらに取ることも視野に入れているのだろう。
■戦争は勝者にとってすら無益
しかし、利害関係のない第三者から見れば、いくつかの無人の岩礁を支配することによる利得よりも、習氏の国が抱え込むリスクの方がはるかに大きい。
習氏の率いる中国は複雑な経済改革に着手したばかりで、世界経済に深く組み込まれているうえに、高所得国になるというゴールに至る道のりはまだ長いからだ。
これはかつてイングランドのリベラル派政治家、ノーマン・エンジェルが1909年の著書『The Great Illusion(大いなる幻想)』で提起した問いにほかならない。
エンジェルは、欧州の大国同士の戦争など考えられないと論じたと一部で指摘されているが、そうではなかった。
そんなに愚かな人ではなかった。
エンジェルが主張したのは、戦争は勝者にとってすら無益なものになる、ということだった。
争って領土を獲得したところで、市民の福祉の向上には何の役にも立ちはしない、市民やその指導者たちが一時的に有頂天になって小躍りできるぐらいだろう、と説いたのである。
これほどまでに的中した予言もあるまい。
いざ戦争が始まると、主な参加国は軒並み壊滅的な損害を被ることになったのだから。
先ほどの問いに戻ろう。
今日の中国の指導者が、いくつかの岩礁について主権を主張することにはあのようなリスクを冒す価値があると考えるのはなぜなのか、という問題だ。
確かに中国は、今回は咎めを受けずに済むかもしれない。
次回も、そのまた次もそうかもしれない。
しかし、この手を試みればそのたびに同じリスクを抱え込むことになる。
そこで生じ得る損失を正当化できる利得とは、果たしてどんなものなのだろうか?
■全面対決になれば、負けるのは中国
軍事専門家によれば、もし正面からの対決になれば負けるのは中国だという。
中国経済は劇的な成長を遂げてきたが、その規模はまだ米国よりも小さい。
米国と日本を足し合わせればなおさらだ。
何よりも、米国はまだ海上を支配している。
もし本格的な戦いになったら、米国は、中国と世界のほかの国々との貿易を遮断することができるだろう。
中国が所有する、流動性のある外国資産の大部分を接収することもできるだろう。
世界に及ぶ経済的なダメージは非常に大きなものになるだろうが、中国が受けるダメージの方が、米国とその同盟国が受けるダメージよりも大きくなることはまず間違いない。
何と言っても、中国は例外的なほど開かれた大国だ。
国内総生産(GDP)に対する貿易額の比率は米国や日本よりも高い。
また資源が乏しいため、重要な原材料の多くを輸入に頼っている。
技術力は急速に伸びているものの、外国のノウハウや外国からの直接投資への依存度は高い。
中国の技術力に対する世界のほかの国々の依存度よりも、はるかに高いのが実情だ。
もし戦いが始まれば、西側諸国や日本の企業の多くは撤退を余儀なくされ、安全そうなほかの国を目指さざるを得なくなる可能性がある。
また中国の外貨準備はGDPの40%に相当する規模だが、その定義上外国で保管されているため、その大部分がリスクにさらされることになろう。
エンジェルが生きていたらきっとそう言うだろうが、中国にとって、紛争が始まるリスクを冒すことは明らかに理にかなっていない。
沖合の領土をわずかに拡大することで得られる利益よりも、貿易を拡大して経済的な相互依存度を深めることで得られる相互利益の方がはるかに大きく、また(誰しもそう思っただろうが)説得力もある。
これは第1次世界大戦の時も同じで、被害を正当化できる利得などなかった。
■いくら何でもリスクが大きすぎるゲーム
だが残念なことに、現状維持を主張する強国とその修正を求める強国との摩擦は、どれほど破滅的なものになろうと、紛争につながる可能性が高いということも歴史の教えるところだ。
実際、古代ギリシャの偉大な歴史家ツキディデスによれば、大変な損害をもたらしたペロポネソス戦争の原因は、勢力を強めるアテナイに対しスパルタが不安や心配を覚えたからだという。
ナショナリストの野心、そして過去の悪行に対する恨みは、実に人間らしいものだ。
しかし、このゲームはいくら何でもリスクが大きすぎる。
中国国民の長期的な利益のために、習氏は今一度考え直し、このゲームをやめるべきだ。
By Martin Wolf
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朝鮮日報 記事入力 : 2013/12/05 08:12
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/12/05/2013120500483.html
英紙「中国は第1次世界大戦前夜のドイツ」
英国のフィナンシャルタイムズ紙(FT)は4日、東シナ海で防空識別圏(CADIZ)を一方的に宣布した中国について
「100年前の1914年に第1次世界大戦を引き起こしたドイツと同じ失敗をする恐れがある」
という論調のコラムを掲載した。
記事を書いたマーチン・ウルフ論説委員は
「中国はカイゼル(当時のドイツ皇帝)の失敗を繰り返すな」
と題されたコラムで
「現在の中国と日本の対決は、20世紀初頭における(第1次世界大戦勃発前の)ドイツと英国の海軍力拡張競争とよく似ている」
とし
「『攻撃的な民主主義者』である習近平国家首席率いる中国と、それに決して劣らない安倍晋三首相率いる日本が対決し、米国が軍事同盟を通じて日本を後押しする現在の状況は、破滅的な対立を呼び起こすリスクを抱えている」
と警告した。
日本が管轄している尖閣諸島(中国名:釣魚島)を含む海域の上空に中国が防空識別圏を設定したことについて「現状を変更しようとする『あからさまな挑発』」として
「中国が設定した防空識別圏において、中国人民解放軍の戦闘機と日本の自衛隊の戦闘機が交戦し、中国軍が民間航空機を攻撃あるいは拿捕(だほ)するといった偶発的な事態が発生する可能性も排除できない。
第1次世界大戦も小さな事件がきっかけで一気に戦争にまで進んでしまった」
と指摘した。
全面対決が発生した場合について、ウルフ氏は
「中国は間違いなく負ける」と予想した。
中国は驚くべき経済成長を成し遂げたが、それでも米国には劣っており、また何よりも米国が実質的に海を掌握していることなどを大きな要因として挙げ
「米中両国が本格的に衝突した場合、米国は中国との貿易を禁じ、中国が海外に保有する資産をすべて凍結するのはもちろん、中国に投資している米国、日本など各国の企業もすべて撤収する」
とした上で
「そうなれば必要な物資を輸入に依存している中国は、壊滅に近い打撃を受けるだろう」
との見方を示した。
ウルフ氏は
「現状を維持しようとする勢力と、これを変えようとする勢力が衝突した場合は間違いなく対立が起こるが、その結果は破壊的というのが歴史の教訓だ」
「習近平国家首席は中国国民にとっての長期的な利益を改めて考え、(挑発的な)行動はやめるべきだ」
と訴えている。
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