2013年12月4日水曜日

共産党と解放軍との亀裂?:中国の防空識別圏、習主席はなぜ売り込まないのか

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ウォールストリートジャーナル     2013年 12月 03日 13:37 JST
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304125104579235081854822274.html?mod=WSJJP_hpp_MIDDLENexttoWhatsNewsThird

【寄稿】中国の防空識別圏、習主席はなぜ売り込まないのか
 By     RUSSELL LEIGH MOSES

 中国が先週、東シナ海の係争水域周辺上空をカバーする新たな防空識別圏を設定した。
 これは、東シナ海で力を振るおうとする強力な新中国指導部の打ち出した戦略のようにみえる。
 しかし、防空識別圏の最初の試練に対する北京の反応、ないし反応の欠如は、はるかに複雑な事情があることがうかがえる。

 中国が新防空識別圏を発表した直後の先月26日、米国は爆弾を積んでいないB52爆撃機を同識別圏内に飛行させた。それは意識的な挑発飛行だった。
 中国はひるんだ。
 中国空軍はB52の進入に反応せず、B52と接触ないし連絡しようともしなかった。

 その後、中国はその週の後半にかけて攻撃的になった。
 29日、米国と日本の軍用機を監視するため戦闘機を派遣したのだ。
 しかし主要な公式メディアがこれをほとんど報道しなかったことは、北京中央で防空識別圏の考え方に関する意見が対立していることをうかがわせる。

 それはまた、中国共産党の新指導部と軍部との間に緊張が存在していることを想起させる。

 中国の共産党と人民解放軍の機関紙など主流メディアは今なお、北京中央における政治サークルの支配的な考え方の最良の代表だ。
 中国指導部が新たな措置について自信を持ち、最近の動きに満足しているならば、この問題でこうしたメディアによる広範囲な報道の仕方があってしかるべきだ。
 同時に北京中央トップからこの問題に関する主要なステートメントが出されてもいいはずだ
 しかし、そうした動きはほとんど皆無だ。

 ナショナリスト(国粋主義)的なメディアでは、お決まりの外国非難を展開している一方で、
 先月29日付の共産党機関紙・人民日報と軍機関紙・解放日報はいずれも米国の防空識別圏進入に関する国防省の記者会見を義務的にカバーしているが、それ以上の記事掲載はなかった。

 こうした際立った沈黙姿勢は、中国の戦略が揺らいでいること(あるときには強硬路線で鳴り物入りだが、その後後退して沈黙する)を示唆している。
 これは北京中央トップ階層から明確で一貫したガイダンス(指導)が欠如しているからだ。

 持続的な方向の欠如の一つの説明としては、中国の最高指導者である習近平国家主席が国内改革に気をとられていることがある。

 党メディアは習主席の最近の地方視察旅行を大々的に伝えてきた。
 それは防衛識別圏をめぐる先週の対峙(たいじ)のピーク時に山東省を視察したことも含まれている。
 その際、習主席は地元当局者に対し、党の最近の改革の青写真の「精神を実行する」必要性を強調した。

 東シナ海の争点について中国指導部内でのコンセンサス形成にもう一つ潜在的な障害となるのは、習氏が中国軍部との間で温かい関係を享受していないことだ。

 軍の一角から冷たい風が吹く有力な理由がある。
 習氏は過去1年間にわたって汚職撲滅運動を推進しているが、軍部も無傷ではなかった。
 最近、汚職捜査官は軍のロジスティクス(兵站)の監視強化の構えをみせた。

 習氏はまた、国民に道徳的な先導役であるよう軍に執拗に促している。
 自制と倹約に関してはとくにそうだ。

 習氏は、汚職取り締まりは必要とみる軍の下級層や一部の上級士官から支持を得たようにみえる。
 しかし、習氏の前任者である最高指導者たちからの大盤振る舞いを享受した軍の将軍たちにとってはそうではない。

 東シナ海での防空識別圏をめぐる対峙について、習氏には軍の司令部をあからさまに支持する機会があった。
 しかし少なくとも表向き習氏は何もしていない。
 29日に山東省済南の軍区本部を最近訪問した際、習氏は一般的な中国兵士を支持する必要を強調するにとどめ、軍上層部を称賛するのは控えた。

 防空識別圏の設定は、習氏の署名なしに行われたはずはない。
 だが、習氏がその売り込みにほとんど何もしていないという事実は、
 習氏や党の他の幹部が米国とその同盟国との対峙が本当に中国という国にとって必要なのか疑問視し始めている可能性を示唆している。
 とりわけ国内的に余りに仕事が多い現状ではなおさらだ。

 それが事実だとすれば、今後何日間かの疑問は、東シナ海をめぐって、あるいは軍本部内で本当の対決が起こる前に、習氏と支持者たちが軍内部の同志たちに冷静になるよううまく説得できるかどうかだ。

 (筆者のラッセル・リー・モーゼス氏は北京中国研究センター=Beijing Center for China Studies=の主任教授。現在、中国の政治システムにおける権力の役割の変遷に関する本を執筆している)


 中国防空識別圏設定から数日がたったが、不思議なことに
中国政府共産党の匂いがあまりなく、そして習近平の姿が明瞭化していない。
 メデイアや識者の意見によれば習近平は軍を完全に把握しているという。
 それにしてはなんだかおかしい。
 政府当局や共産党の前に解放軍が出てきているような感じが強く伝わってくる。
 本当に習近平は軍を掌握できているのか?
 
 政府当局は先日、日本の大型の経済使節団を招待した。
 トップはトヨタ自動車の社長であり、中国への投資を呼び込んでいた。
 その使節団が帰った直後にこの防空識別圏が周辺諸国との協議なしに一方的に発表された。
 内容からして日中は一触即発の危機へと向かうことになった。
 何かちぐはぐではないだろうか。
 これまで日本の投資先のトップは中国であった。
 しかし、最近の調査によれば中国からの撤退が加速して、中国はいま4位にまで後退しているという。
 その、投資を飛び戻すための使節団の招待ではなかったか。
 また、中国当局は経済の陰りを払うために、上海自由貿易区を作って外資の呼び込みを始めているところである。
 その外資の上位に顔を出しているのが日本である。
 今にも紛争が起きそうな状態にあってはとても投資などは無理に決まっている。
 日本と中国が危うい状態になれば、他の外資も若干の不安を抱くことになり、投資の足は鈍くなってくる。
 上海自由貿易区の意味が薄らいでしまうのではなかろうか。
 経済問題とこの防空識別圏設定の関係はどうみてもマッチしない。
 経済は政府当局が管理しているはずなのに、それに水をかけるような防空識別圏の発表が国防部からなされたとすると、普通ならやはり政府共産党と中国解放軍はどこかで齟齬をきたしているのではないかと推論してしまうのは当然のことになるだろう。

 つまり、解放軍にとって心理的に習近平は「お飾り」にすぎないのではないかということになる。
 解放軍が徐々に勢力を増してきているのではないだろうか。
 その象徴がこのまるで政府当局を置いてけぼりにしたような防空識別圏の設定のように思える。
 解放軍は中華人民共和国の国軍ではない。
 中国共産党の党軍であり、私軍である。
 ソビエト共産党は党の軍隊であった赤軍を、連邦国の軍隊、すなわち国の軍隊にした。
 その結果、ソビエト軍は国内の政治的騒乱には、まったく参加していない。
 政権を取得したものの命令には従うが、国軍がゆえに、政治には関与しないという姿勢を貫いた。
 よって、ソビエトが崩壊したとき旧共産党赤軍は国の軍隊として生き残った。
 中国共産党は解放軍を国軍にはしていない。
 よって、共産党という集団の中の軍事集団が解放軍になる。
 ゆえに解放軍とは私軍になる。
 解放軍が徐々に勢力を増してきたらどうなるか。
 国軍でないため親組織である共産党を食うこともできるということになる。
 共産党と解放軍は勢力の強弱にによってどちらも親組織になりうる可能性をもっている。
 これまでは共産党のほうが強く、解放軍はその軍事組織ということになっていた。

 現在、共産党がどこまで解放軍を抑えているかは不明である。
 名目上のトップは習近平ではあるが、本当に軍の権力を握りきれているかはわからない。
 もし、共産党と解放軍がせめぎ合う状況が出てくるとしたらどうなるか。
 その典型例をこの防空識別圏設定にみるような気もするのだが。
 共産党はこれまで解放軍は共産党に従え、という論説を度々、機関紙に発表している。
 ということは、相当に解放軍が共産党の権力構造からはみ出しつつあるということでもある。
 
 中国の防空識別圏が問題を引き起こしているのは、世界で認証されている防空識別圏と異なるためである。
 それは設定した識別圏をあたかも領空のように取り扱っていることにある。
 公空であるべき空域を飛行した航空機に暴力的手段が課せられることがあるという点である。
 それは、解放軍は何をしたいのかということでもある。
 解放軍空軍は、解放軍陸軍の航空部隊、つまり「陸軍航空部隊」の性格をもっており、陸軍の影響傘下にあるとみていい。
 つまり、中国防空識別権とは陸軍の領地主義を空の部分にまで拡大して、
 「ここからここまでは、オレのものだ!」
と宣言したということである。
 解放軍陸軍は空軍を使って国境紛争を日本、そしておそらく台湾、南シナ海まで拡大していこうとしている。
 そのことによって、自らの存在感をアピールして、共産党サークル内における解放軍の力関係のアップを狙っているということになる。
 海軍は陸軍とは別の思考回路をもってはいるが、最終的には陸軍に引きずられることになる。
 この、陸軍、海軍、空軍(陸軍航空部隊)の動きは、ちょうど戦前の旧日本軍に似ており、それをイメージすると分かりやすい。

 解放軍の力が大きくなっていくと、共産党サークルは解放軍サークルになる。
 そして、解放軍が共産党を使って政治を仕切っていくことになる。
 つまり、共産党は解放軍の傀儡政党・傀儡政権になる。
 表面上は共産党独裁ではあるが、裏の為政者は解放軍になるかもしれないということである。

 共産党とてそれをみすみす見逃してしまうわけにはいかない。
 習近平も反撃にでるはずである。
 公安警察・武装警察は中国の軍事費を上回る予算が与えられている。
 これは、解放軍のようにはならない。
 共産党の御庭番であり、飼い犬でもある。
 さらに今回、中国版KGBが設立された。
 これが、共産党の権力固めに解放軍と対峙するものになりうるかもしれない。
 おそらく習近平はそれを狙って、設立を実行したのだろうと思う。
 名目はテロ防止ということであるが、その目的の大半はいかに解放軍を抑えこむか、でろうと思う。

 中国共産党と解放軍、これまでのように経済成長が順調にいっていれば共産党の威力は充分なものである。
 だが、それに陰りが見え、社会不満が大きくなり、騒動にまで発展するようなことになると、共産党の賞味期限は切れたと判断される。
 とはいえ、共産党に変わる政党があるわけでもない。
 共産党以外にある政治権力は解放軍しかない。
 解放軍が権力を取得して、共産党を使って政治をやり始めることもありうる。
 解放軍は軍隊であり、戦うことが仕事になる。
 こうなると中国をめぐる様相は混沌を極めてくる。
 今回の防空識別圏にみる、度外れた内容や動きはやはり解放軍が力をつけてきて、共産党を押し切るほどになってきたというのがわかりやすい。
 もし、向こう数年の経済政策で共産党が失敗したら、解放軍は共産党を接収する行動にでるのではないだろうか。
 解放軍の政治部門が共産党となるという反転状態が発生することもないとはいえない。
 習近平はその阻止に全力をあげるだろう。
 中国版KGBを設立とそれに強権を与える方向に動くだろう。
 この権力機関をもって解放軍の突出を抑えにかかるだろう。

 今後の中国の経済発展は自然環境をますます悪くしていくだけになる。
 地下水・河川、土壌、大気の汚染によりガンを始めとする人体の機能障害が増大し、危険作物が巷にあふれ、考えられるありとあらゆる悪魔が出現するだろう。
 経済発展を目指すかぎり中国国土は人が暮らせる大地からは遠ざっていく。
 共産党と解放軍が権力争いをしている限り、それを押しとどめる方向へむかうことはないだろう。






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