2013年12月9日月曜日

「石炭から天然ガス」へ:中国経済に翻弄される石炭大国モンゴル

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International Business Times  2013年12月9日 07時45分 更新
http://jp.ibtimes.com/articles/52116/20131209/630866.htm

中国に翻弄される、石炭大国モンゴルのいま


●モンゴルの住居、ゲル。ひびが入っている。2013年6月22日撮影。

 13世紀にチンギス・ハンによる王朝があったモンゴルは、人口290万人で、150万平方キロメートルの国土をもつ内陸国である。山や砂漠地帯もある中、人口の大部分が遊牧民をしているモンゴルであるが、豊富な地下資源のおかげで経済的富を享受してきた
 。ここ10年間で1人当たり収入は7倍に増加した。

 かつては、旧ソビエト連邦の衛星国家として、資源の採掘を行っていた。
 1991年の冷戦終了から今年まで、同国のGDP(国内総生産)は平均で5.3%増加した。

 しかし最近、事態は悪い方向へと予期しない展開を遂げた。
 中国からの需要が低下し、さらには物価も低下したのだ。
 その結果、モンゴル経済は、好景気から一転、不景気となった。

 ウランバートルにあるマーケティング調査会社のバトロチリン・アリグン(Batorchiriin Ariguun)氏は、
 「石炭部門が底をついているので、私はほとんど廃業している状態です。
 私は経済が回復してくるであろう2015年まで、事業を凍結するかもしれません」
と語った。

 モンゴルには石炭、銅、金、ウラニウムなど、まだ未開発で大規模な鉱床が多くある。
 最盛期のときには、多くの外国資本が流入し、モンゴルはいまだかつてない経済成長を享受した。
 ウランバートルには、高層ビル群が建築された。
 その周囲には、モンゴル遊牧民のテントであるゲルが設けられていた。

 しかし、モンゴルが隣国である中国に依存していたことが問題となった。中国は、ほとんど唯一の貿易相手国である。その中国は現在、モンゴルからの石炭輸入を減らしている。

 確かに、2013年もモンゴル経済は12%以上成長する見込みである。
 しかしそれは、中央銀行による危険とも呼べる金融政策によるものである。
 中央銀行は利率を13.25%から10.5%まで切り下げて、補助金などを通じて金融システムにお金を投入している。
 現在、銀行資産の30%が中央銀行の資金に依存しており、その割合はギリシャやキプロスといった負債を抱える欧州諸国以上である。

 一方、インフレ率は10%近くに達している。
 その結果、アリグン氏のような事業家は収支を合わせるために必死になっていると言える。

 今日、モンゴルからの輸出、および同国への投資の85%は、採掘が占める。
 生産高は低下しているものの、同国のGDPへの寄与は20%と比較的高い。
 エネルギー産業ははるか昔に伝統的な農業部門を追い抜き、経済の主要な成長エンジンになっている状態である。
 ちなみに、農業部門はGDPの15%を占める。

 信用格付機関であるムーディーズ(Moody's)は、
 「経済の多様性がなく、2つの分野だけに依存していることは、変化の影響を受けやすい経済体質を生み出しています。
 そして、農業から鉱業にシフトしたことで、その傾向は強まりました」
とレポートで分析している。

 政府は経済を多様化させようとしているが、多様化には時間がかかる。
 シンガポールの投資会社であるテマセク(Temasek)の分析によると、同国にある大きな10つの鉱床の合計価値は、約130兆円である。
 また、2013年7月に生産を開始した国営のトリント・オユ・トルゴイ鉱山は、2020年までには同国のGDPの3分の1を占めると予想されている。
 同鉱山には、世界で最大の未開発のコークスと一般燃焼用石炭の鉱床があり、向こう数年間のうちに本格稼動される。

 モンゴル経済の低下傾向は見逃すことができない。
 1月~8月で海外投資が46.8%減少した。モンゴルの通貨であるトゥグリク(tugrik)は、対米ドルで25%低下し、過去10年間で最低の価格をつけた。
 国内総生産(GDP)の見通しは、国際通貨基金(IMF)や世界銀行といった国際的なオブザーバー機関によって、下方修正され続けている。

 同国の不動産開発業者であるMADインベストメント・ソリューション(MAD Investment Solutions)は、
 「どんなモンゴルの会社に聞いても、顧客が減っていると答えるでしょう。
 2011年に大規模な宣伝とともに建てられた高級ショッピングモールは閑古鳥が鳴いています。
 モンゴルに居住する外国人数も減っています。
 そして、さらに問題なのは、ウランバートルに悲観的なムードが漂っていることです」
と説明した。

 モンゴルの経営者も、アナリストも、モンゴル経済の多様化を促進させるためには、政府が全国的に経済成長が起こることを保証する必要があると指摘する。

 アリグン氏は、
 「もし、モンゴルで生き残りたいなら、ひとつのビジネスだけをしてはいけません。
 事業領域を広げる必要があります。
 成功している複合企業は、あらゆるフィールドでビジネスを展開しています」
と述べた。

 *この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。



サーチナニュース 2013/12/16(月) 11:06
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=1216&f=national_1216_006.shtml

中国:汚染対策「石炭からガス」の動き中断…供給体制不備と判明

 中国政府・国家発展改革委員会(発改委)の徐紹史主任は15日、大気汚染を緩和するために進めてきた火力発電や地域暖房などの燃料についての「石炭から天然ガス」への切り替えを、一時中断することを明らかにした。
 天然ガスの需要が急増して供給不足が発生しており、これ以上の混乱を避けるためという。
 中国新聞社が報じた。

  中国では深刻な大気汚染が続いており、多くの人々の共産党や政府に対する不満・不信の一因にもなっている。
 中国国務院(中央政府)は「大気汚染防治行動計画」を取りまとめたが、地域暖房における「煤改気(石炭をガスに改める)」作業の加速も盛り込まれていた。

  中国では発電における石炭からガスへの切り替えも進められているが、中国では7月以降、猛暑の影響で電力事情が高まったこともあり、天然ガスの供給が逼迫(ひっぱく)し始めた。

  暑さが一段落して電力需要が低下し、地域暖房などの需要も発生しない秋になっても、ウルムチ市(新疆ウイグル自治区)、北京市、石家荘市(河北省)などで、需給の緊迫が発生。
 これまでになかった現象という。

  発改委は11月26日、各地方政府に対して「煤改気」の進行と、今後数年の天然ガス需給状況について、2週間以内に調査するように通達した。
 それ以降も、「煤改気」についての通達を繰り返したという。

  同委の徐主任は15日の会議で再び、天然ガスの受給がバランスを失っていることを論じ、生活用と自動車用のガスの確保を「最優先で実現せよ」と、強い言葉で求めた。

  徐主任は2014年の作業として、天然ガスの供給増や需給管理の強化に努めると表明。
 さらに、「煤改気」を進めるにあたっては、供給にかんする契約を先行させることと、ガス発電の導入は一時的に中止するよう指示した。

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◆解説◆

  中国では、中央政府が方針を示し、各地方政府は中央の指示にもとづいて具体的な作業を行う。

  各地方政府の責任者については、中央の指示の実現が「厳しい成績考課」の対象になる。
 政策に真剣に取り組み成果を出した者がより高い地位に就くチャンスが出てくるという、人材登用などでは好ましい面がある反面、「上から言われたことだけを実行する」者が出てくるという弊害も出てくる。

  特に、中央の指示に「諸般の事情についての見落とし」があった場合など、各地方政府が「熱心に取り組めば取り組むほど、問題が大きくなる」という事態が発生しかねないことになる。
 政策実現について、「安直に移ろいやすい民意にとらわれすぎることは少ない」という強みがある反面、「上からの指示だけを重視しする」弊害も発生しやすいと言える。

  国民に大きな不安・不満がある以上、中国政府は大気汚染の低減に真剣に取り組まざるをえない状況だ。
 中国における天然ガスの需要増が今後の国際価格に影響を及ぼす可能性が強まりつつある。

  中国の2009年における発電電力量構成比は
①.石炭火力が79%、
②.天然ガスが2%、
③.原子力が2%、
④.水力が16%、
⑤.その他の再生可能エネルギーなどが1%
だった(資源エネルギー庁の2012年発表による。日本についても同様)。

  日本は同年において、
1].石炭火力が27%、
2].石油が9%、
3].天然ガスが27%、
4].原子力が27%、
5].水力が7%、
6].その他の再生可能エネルギーなどが3%
だった。
 ただし日本では2011年5月の東日本大震災以降、原子力発電の比率が大幅に減少した。

  日本は発電について「ベストミックス」の考えかたで、国際的な需給体制の変動なども視野に入れてリスクの分散を図ってきた。
 石炭火力発電については、有害物質を空気中に放出しない新型の設備導入に力を入れた。
 中国の場合、石炭発電そのものよりも、環境への配慮が乏しい旧式の設備が多いことが、深刻な大気汚染につながっている大きな理由だ。
 産業などにおけるエネルギー効率が悪いことも、環境への負荷を高める大きな原因だ。







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