2013年12月3日火曜日

中国、日本、米国、緊迫するにらみ合い:中国が強大だと米は日本の挑発を容認しない

_

●【図解】日中の防空識別圏〔AFPBB News〕


JB Press 2013.12.03(火)  The Economist
http://www.afpbb.com/articles/-/3004054?ref=jbpress

中国、日本、米国:緊迫するにらみ合い
(英エコノミスト誌 2013年11月30日号)

 中国が新たに設定した防空識別圏は、この地域における憂慮すべき新たな動きを示すものだ。

 中国国防省の報道官による11月23日の発表には官僚的な響きがあった。
 その内容は、東シナ海に新たに設定された防空識別圏(ADIZ)を飛行するあらゆる航空機は、必ず事前に中国当局に通告し、中国の航空管制官の指示に従わなければならないというものだった。

 これに対する米国の反応は素早かった。
 11月26日、バラク・オバマ大統領は、B52爆撃機2機を派遣し、中国に通告することなく新しい防空識別圏を通過させた。

 このようなにらみ合いは、米中の戦略的対立がエスカレートし、1996年以降では最も懸念される状況にあることを示している。
 1996年には、当時国家主席だった江沢民氏が台湾海峡でのミサイル演習のために多くの侵入禁止海域の設定を命じ、米国が航空母艦2艦を派遣する事態を招いた。

 域内に入った航空機に識別に応じるよう求める空域を設定している国は数多いが、他国の領土とは重ならないようにする場合が多い。
 中国の防空識別圏は、日本のものと重なっている。
 さらに、日本の施政下にあり、尖閣諸島と呼ぶ小さな岩の塊からなる島々(中国も領有権を主張し、釣魚島と呼んでいる)に加えて、韓国が領有権を主張する、離於島(イオド)という名の暗礁の上空も含んでいる。

 この中国の動きは明らかに、中国の領有権の主張を強化するためのものだ。
 11月28日、日本と韓国は中国の防空識別圏圏内に自衛隊と韓国軍の航空機を送り込んだ。

■若気の至り

 新興の経済大国では、地域に対する覇権意識の高まりがつきものだ。
 こうした大国の行動が国際基準に従っている限りは、そうだとしても問題はない
 しかし、今回の件では、中国は基準に従っていない。
 そして、60年間にわたって東アジアにおける空と海の航行の自由を保証してきた米国が、その点を明確にしようとするのは正しい。

 中国の動きがどれほど懸念すべきものかは、その背後にある思考によって変わってくる部分もある。
 成長が速すぎて自分の力が分かっていないティーンエイジャーと同様に、中国は自らの行動が及ぼす影響を見くびっていた、という話なのかもしれない。
 米国の爆撃機は防空識別圏の周縁部をうろついていただけだとする中国の主張は、ぶざまなまでに見苦しかった。

 しかし、自らの行動が招く結果に気づかない若者は、多くの場合、トラブルを起こすものだ。
 中国は近隣諸国や米国との間に、今後何世代にもわたる戦争の火種を作り出した。

 それだけに、こうした挑発が意図的なものだったとすれば、さらに懸念すべきことだ。
 2013年に入って新たに国家主席に就任した習近平氏が掲げる「中国夢(チャイナドリーム)」は、経済改革と声高なナショナリズムの混合物だ。

 防空識別圏の設定は、習主席が中国共産党の第18期中央委員会第三回全体会議(三中全会)の席上で、大いに評価に値する抜本的な国内改革案を発表した直後に行われた。
 新たな防空識別圏の設定は、特に軍部で大きな権力を握るナショナリスト陣営にアピールするだろう。
 さらに、習主席が西洋かぶれのリベラルだとの批判から同氏を擁護するのにも役立つ。

 もしこれが習主席による駆け引きなのだとしたら、危険なゲームだ。
 東アジアではこれまで、強い中国と強い日本が同時に存在したことは1度もなかった。
 はるか昔から1850年代までは中国がこの地域を支配していたが、それ以降は西側諸国の到来に刺激を受けた日本が近代化を進めたのに対し、中国は外国の影響に抗った。

 現在の中国は、躍起になって東アジアの支配権を取り戻そうとしている。
 第2次世界大戦における日本の野蛮な占領の苦い記憶が、この願望を先鋭化させている。

 現代の東アジアと20世紀初頭の欧州との間に類似点を指摘する声は多いが、そこにはこのような、新興の大国と既存の大国が衝突する可能性が背景にある。
 現代の東アジアでは、尖閣諸島が欧州のサラエボにあたるというわけだ。

■トラブルを呼ぶ海

 今は当時の欧州ほどの緊張の高まりはない。
 日本の憲法は一切の軍事攻撃を禁じているし、中国はあらゆる手を尽くして、1920年代から1930年代にかけての日本の台頭とは異なり、中国の場合は平和的な発展になると強調するのが常だ。

 しかし、近隣諸国は神経質になっている。
 防空識別圏の設定が南シナ海における中国の野望と符合するように見えるだけになおさらだ。

 中国の地図には、「九段線」と呼ばれる、南シナ海全体を取り囲む9本の境界線が描かれている。
 世界金融危機の勃発を受け、恐らく自国の台頭と米国の衰退という自らのシナリオを確信したであろう中国は、近隣諸国との関係においてその勢力をさらに伸ばし始めた。

 領有権を巡る係争の渦中にある岩礁に自国の船舶を派遣し、外国の石油会社に圧力をかけて採掘調査をやめさせ、南シナ海で合同演習を行った米国とベトナムの海軍を非難した。
 これらの行動に対し、当時の米国務長官、ヒラリー・クリントン氏が即座に反発を見せると、中国は態度を軟化させ、当該地域に対しても表向きは微笑攻勢に戻ったかに見えた。

 中国政府は防空識別圏を用いて東シナ海全域を対象とした九段線を確立しようとしているとの見方を示す観測筋もいる。
 こうした人々が怖れているのは、
 中国が次の一手として南シナ海で防空識別圏を宣言し、この地域全体の海と空の両方に対する支配権を主張することだ

中国がそうした具体的な野望を抱いているかはともかく、
 防空識別圏の設定は中国が東アジア地域の現状を受け入れず、これを変えたがっていることをはっきりと示している。

 今や中国の指導者には日本の航空機を追尾する口実ができた。
 中国側の船舶は既に、尖閣諸島周囲の領海に進入するなという日本側の要求を無視している。

■米副大統領のアジア歴訪は願ってもない好機
 
 何か打つ手はあるのだろうか? 
 12月第1週に、米国のジョー・バイデン副大統領が中国にやって来る。
 タイミングが悪いとも言えるが、これは願ってもない好機だ。

 バイデン副大統領と習国家主席は旧知の間柄だ。
 習氏は国家主席就任前に、バイデン副大統領の招きで5日間を米国で過ごした。
 今回、バイデン副大統領は韓国と日本も訪れる予定だ。

 米国のアジアへの「ピボット」は、東アジア地域ではあまり真剣に受け止められていない。
 オバマ大統領は国内問題に気を取られていると見られているのだ。
 バイデン副大統領はこの機会を利用し、地域における航行の自由の保障に対する米国の決意を明確に打ち出すこともできる。
 ささいな問題で争っている日本と韓国には、お互いの相違点を乗り越えろと諭す必要がある。

 中国に関して言えば、同国は責任ある世界の大国にふさわしく振る舞うべきで、60年にわたる北東アジアの平和を犠牲にし、吹きさらしの岩をいくつか奪い取ることで多少の得点を稼ぎたがるような中国はトラブルメーカーになってはならない。
 中国は、日本が提案する軍事ホットラインの構築を受け入れるべきだ。
 同様のホットラインは、既に北京とワシントンの間で設置されている。

 東アジアの各国は、当該地域の強国同士が安全保障について議論できるような何らかの枠組みの構築に向け、さらに力を尽くさなければならない。
 そういう枠組みが1914年の欧州に存在していたら、事態は異なる展開を迎えていたかもしれないのだ。

© 2013 The Economist Newspaper Limited. All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。



「中国網日本語版(チャイナネット)」2013年12月2日
http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2013-12/02/content_30770464.htm

 中国が強大になるほど 米国は日本の挑発を容認しなくなる

 米航空大手3社は11月30日、「米政府のアドバイスに従い」、東中国海の防空識別圏を通過する便の飛行計画を中国当局に提出し始めた。
 これ以前、米国は爆撃機「B52」を同空域に派遣して日本とともに異議申し立てをしていた。
 しかし民間航空機の飛行計画提出問題について米国はまた日本と別の道を選んだ。
 米国は中米日3カ国のゲームで基本的なルールを守ったといえる。

 米国のアジア太平洋地域における戦略は日本に手を貸すことでも、中国けん制でもなく、中日のバランスをとることだ。
 どの国であろうと排他的にアジア太平洋地域の問題を主導するのを防止し、
 米国が戦争に巻き込まれるのを回避するのが米国のアジア太平洋地域における核心的利益で、米国のアジア太平洋地域における安全保障システムはこの2つの核心的利益に奉仕するためにある。
 日米同盟は中国が排他的にアジア太平洋地域の問題を主導するのを防止し、米国の戦略的負担を軽減する一方で、日本を監督し、日本が米国を戦争に引きずり込むのを防ぐ役目がある。
 この2つの役目はどちらも重要で、米国は両者の間でバランスをとっている。
 日米は同盟国で、米国は日本を支持するが、日本が米国の支持を利用してアジア太平洋の地域情勢を緊張させ、米国を戦争に引きずり込み、米国の戦略的負担を増し、米国の利益と正反対になれば、米国は日本を批判だろう。
 この2~3年の米国の釣魚島問題をめぐる姿勢や行動がこの基本的原則を十分実証している。

 米国は日本がそのアジア太平洋地域の安全保障システムのために資金やヒト、力を出すのは喜ぶが、地域の緊張は望んでいない。
 ここ数年、国力の衰退にともない、日本国内の右翼傾向が台頭し、武装力の建設を再び重視し始め、アジア太平洋地域においてより大きな軍事的役割を求める声が高まっている。
 米国は原則的には日本がより大きな役割を発揮するのを支持し、米国の出費を節約するが、日本がアジア太平洋地域であまりに多くの敵を作っている現状に、米国は地域情勢が緊張し、却って自らの戦略的コストが増えるのを心配している。
 そのため米国は日本国内の左右の勢力のバランスをとり、右翼勢力が手綱を振り切った馬になるのを回避する必要がある。
 米国が日本を叩く力加減と頻度は、日本自身の行動の性質によって決まり、周辺諸国の日本の行動に対する反応の影響を受ける。
 日米同盟の存在によって日本は米国が提供する安全保障に寄りかかっているため、米国には日本を支持或いは叩く手段が十分にある。

 それと比べて、中米関係はもっと複雑であり、米国が中国のバランスをとるのはさらに難しく、複雑である。
 米国は近年、アジア太平洋の同盟体制を強化し、強大化する中国のバランスをとる。
 その一方で、中米間の建設的な関係の構築を積極的に推し進め、中国均衡におけるマイナスの影響を防止し、中国をライバル視すれば本当に中国がライバルになることを懸念している。
 速すぎ、強すぎる中国均衡は中米関係を悪化させ、米国は不必要な代価を支払うことになり、中国台頭により利益を得られなくなる。均衡が遅すぎ弱すぎれば、米国は手遅れになり、負担できない影響が出ると懸念している。
 これは非常に敏感で微妙な政策のバランスである。

 過去30年以上、米国は均衡調整しながら対中政策をとってきた。
 中国が強大になるほど、米国の中国均衡における圧力は高まる。
 しかし、中国が強大になるほど、米国との利害関係は高まり、米国は協力を最優先し、中国に対して軍事的な均衡をとる際に用心し、中日間の対立に慎重になり、日本の挑発行為を容認しなくなる。
 また、自信を高め、国際化している中国が米国と良好な関係を築く可能性も高まる。
 そのため、中国との協力を積極的に模索すると同時に、中国を抑え怯えさせる安全網を構築することは米国にとって政策の最良の選択である。
(文:牛新春 中国現代国際関係研究院中東研究所所長)


 人によってそれぞれ考えがある。
 中国側にとってはこれも一つの論である。
 また別の考えもある。
 「アメリカは戦争の犬である」
 かれらはなによりも硝煙の匂いを好む。
 自ら戦争の言い分を仕掛けてそれを正義と言って出ていく。
 そこで英雄を作り出す。
 そのヒーロー劇を何よりも好む民族でもある。
 そういう事例はここ数十年で数多くみている。
 さらに、アメリカは敵対する大国を好まない。
 ソビエト連邦がその例である。
 レーガンは宇宙大作戦にソビエトを引っ張り込んで潰した。
 アメリカという国はお人好しな国ではない。
 非情な国家といってもいい。
 今の中国はアメリカにとってさほどの脅威にはないっていない。
 冷静な比較をすればその差は圧倒的といっていい。
 だから好き勝手させている。
 まだ、叩く時ではない、というのが言い分である。
 いつでも叩ける、というのがアメリカの言い分でもある。
 アメリカはいわゆる、アメリカの核心的利益に他国が触れるとき、猛然と敵意をむき出す。
 そして相手を完膚なきまでに叩く。
 その力を持っている。
 いつでも出せるという自信を持っている。 
 だから、安穏としている。
 「やるときはやれる国」である。
 そして、やるときは回りがなんと言おうとアメリカ正義の言い分でやる国でもある。

 中国とは比較にならない。
 超大国の条件は3つである。
①.食料を自給できること
②.エネルギーを自給できること
③.科学技術の自己創意ができ自力で発展させることができること
である。
 中国はこのすべてで外国頼りである。
 よって中国は周囲の手を借りなければ成り立たない国である。
 その手があってはじめて経済発展を促して、軍事増強が可能になった。
 アメリカにとっては、中国はいまのところ小者にすぎない。
 中国が大きくなり、アメリカの逆鱗に触れるようになったとき、
 アメリカはこれまでのルーチンワークと同様に硝煙の匂いを嗅ぎに出かける。
 いまはまだ中国での硝煙の匂いを欲していないだけである。
 アメリカとは平和を希求する国家ではない。
 戦争の犬である。
 これは、頭に叩き込んでおいたほうがいい。



_