2013年12月28日土曜日

窮地に立つ中国IT界の巨人:海賊版問題めぐり「百度包囲網」

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●<ロビン・リー> 1968年、山西省生まれ。94年、ニューヨーク州立大学バッファロー校で修士号学位取得。米国でエンジニアとして活躍後、99年に中国へ帰国し、2000年百度公司を設立。中国国内シェア1位で、世界でもグーグル、ヤフーに次ぐ第3位


「WEDGE Infinity」 2013年12月27日(Fri)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3482

窮地に立つ中国IT界の巨人

中国の検索サービス大手・百度(バイドゥ)の日本語変換ソフトが、変換した文字や文章、パソコンの固有IDなどをサーバーに送信していたことがわかった。
実はこの「百度」、以前から中国国内でもある問題に直面していた。

 中国検索サイト業界において圧倒的な地位を占める『百度』の名前は、日ごろ中国と接点のない日本人にも知れわたっているといっても過言ではない。
 しかも、誇るべきは「ヒャクド」ではなく「バイドゥ」としての知名度の高さだ。
 その百度を率いる李彦宏(ロビン・リー)CEO兼総裁は、国内の富豪ランキングの常連で、2013年も第3位(米『フォーブス』ランキング)、個人資産は1年で2672億円も伸びたと報じられた。

 その百度がいま企業として1つの大きな曲がり角に直面している。
 もし、現在直面する問題を上手く処理することができなければ、百度が今後も現在の地位にとどまることは難しいと考えられているのだ。

■海賊版問題めぐり「百度包囲網」

 11月13日、IT業界の大手4社、中国、米国、日本の著作権保護を目的とした公的組織、さらにエンターテイメント産業界も加わって、百度を公然と批判する連携が生まれ、共同記者会見を開いたのである。

 その名も「中国ネット動画サイト反海賊版連合行動宣言」─。
 同時に百度に対して3億元(約48億円)の賠償を請求したというから穏やかな話ではない。

 北京の夕刊紙記者が語る。

 「動画閲覧サイトをめぐるこの問題は、他のサイトが有料で版権を取得しているのに対し、百度が違法に動画を提供するため、大きな損失を被ってきたことに対する怒りをぶつけたものです。
 しかし、その裏にはもう少し根深い問題があります。
 というのも百度の大躍進の陰にはずっとある共産党幹部との癒着があるとささやかれてきましたが、今回の問題はそのことへの不満が噴出した1つの例だと考えられています」

 10年の年初から噴出した中国政府とグーグルとの争いでは、人権問題の視点からのみ世界で大きく取り上げられたが、当時、一部の関係者の間では百度の圧倒的な地位を確立するためのグーグル虐めという見方も示された。
 真偽ははっきりとはしないが、それはずっと共産党内で宣伝を牛耳ってきた人物との関係だと指摘されてきた。

 IT業界の関係者も語る。

 「百度のビジネスは“無天無法”と呼ばれるように、他の業者が規制を受けることでも、百度だけは許されることがよくありました。
 今回の海賊版の問題は、そうした問題の1つです。今回、“百度包囲網”を形成した連合軍は、百度が政治によって保障されたその関係に風穴を開けることを狙っています」

 李はIT界の成功者に多い“海亀(ハイクイ)組”である。
 北京大学で情報管理を学んだ後にニューヨーク州立大学へと進みコンピュータ科学で修士号を取得。
 卒業後はダウ・ジョーンズやインフォシークで働きながらハイパーリンク解析技術で特許も取得するなど順調な生活を送っていた。

 だが99年、李は米国での成功に飽き足らず自身のシリコンバレーでの経験を生かして凱旋帰国。
 続いてベンチャーキャピタルの支援を受けて中国で百度を設立した。
 帰国の決断の裏には彼の妻の強烈なプッシュがあったとされるが、彼自身は浙江大学の講演でこう説明している。

 「他人からはなぜ米国の快適な生活を捨てるのかと言われた。
 だが、他人の目に困難と映る道は、私にはチャンスに見える。
 そのチャンスを進みたくなるのが私だ」

 国内のエリートの“海亀”という意味では、経歴だけ見れば捜狐の張朝陽(ジャン・チャオヤン)と重なる。
 だが、2人には起業家として肉食と草食ほどの違いがある。
 その特徴の1つが、まさに現在問題になっている著作権へのスタンスである。
 十年来著作権問題で百度を批判し続ける張朝陽との違いは鮮明だ。

◆WEDGE2014年1月号より

富坂 聰(とみさか・さとし)ジャーナリスト
1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、豊富な人脈を活かした中国のインサイドリポートを続ける。著書に『苛立つ中国』(文春文庫)、『中国という大難』(新潮社)、『中国官僚覆面座談会』(小学館)、『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館新書)、『中国報道の「裏」を読め!』(講談社)、『平成海防論 国難は海からやってくる』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『チャイニーズ・パズル―地方から読み解く中国・習近平体制』(ウェッジ)などがある。



レコードチャイナ 配信日時:2013年12月28日 18時3分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=81140&type=0

日本語入力ソフトの情報送信問題、
百度が反論「違法なデータ送信・漏洩はない」
―中国紙


●27日、日本の内閣官房情報セキュリティセンターはこのほど、政府機関や大学に対し、デリケートな文書作成の際に百度などグローバル大手IT企業による日本国外の入力法を使用しないよう呼びかけた。写真は百度IME。

2013年12月27日、日本の内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)はこのほど、政府機関や大学に対し、デリケートな文書作成の際にグーグル、マイクロソフト、百度などグローバル大手IT企業による日本国外の入力法を使用しないよう呼びかけた。
 環球時報が伝えた。

 これを機に一部の日本メディアは中国による「ネットの脅威」を指摘した。
 中国のハッカーが過去に幾度となく日本政府サーバーに侵入し情報の窃取を試みたことに触れ、情報セキュリティーにおいて日本は中国からの脅威に断固とした防衛を図る必要があると報じた。
 また、一部の日本のニュースサイトは「百度IME」をスパイウェアにたとえ、中国側が専門的に開発し、日本側の情報を盗み取り、「情報戦」の武器としていると指摘した。

 百度日本法人は、社内調査の結果、一部のデータがサーバーに送られた事実は確かに存在するが、百度の目的は入力の正確性向上だと説明した。
 基本的に百度はサーバーにユーザー情報を送る際、ユーザーの許可を求めており、許可が得られない場合はデータを取得・利用することはない。
 ユーザーのクレジットカード番号、パスワードなどの信用情報、住所や電話番号などの個人情報は収集されることはない。
 百度日本は今後、改善された入力ソフトを発表するとしている。

 百度は26日、公式ミニブログ(微博)を通じて声明を発表、百度日本語IMEは世界的に最も流行しているクラウド入力技術を採用しており、ユーザーが入力した一部のデータが機密化され、サーバーに送られることになると説明。
 これらのデータには個人プライバシーコンテンツは含まれておらず、ユーザーの利便性向上のためにのみ用いられると述べ、関連するサーバー、データもすべて日本国内で受け入れ、管理しており、違法なデータ送信・漏洩による問題やリスクは存在しないとした。

 技術経済ウォッチャーの瞬雨氏は
 「百度がIMEを利用し情報を収集しているとの日本の論法は非常に可笑しく、妄想ともいえる。
 現代のビッグデータ時代において、すべてのソフト開発企業は小さな情報を一つ一つ収集することを通じ、ユーザーにサービスを提供している。ク
 ラウドIMEは現在最も流行している技術。
 その本体は一種の伝送保存システムであり、マイクロソフト、グーグルもすべて用いている。
 スノーデン氏が暴露した米国の世界監視技術に比べ、クラウド技術はまったく言及するに値しない」
と述べた。

(提供/人民網日本語版・翻訳/HT・編集/TF)






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