2013年12月19日木曜日

米中関係、前途に乱気流:少なくともなにか重大な波乱が将来に控えている

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●人民解放軍の海軍新兵


ウォールストリートジャーナル     2013年 12月 18日 15:35 JST
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702303674004579265420436033290.html?mod=WSJJP_hpp_MIDDLENexttoWhatsNewsThird
By     ANDREW BROWNE

米中関係、前途に乱気流

 現代中国の対外関係、とりわけ中国と米国、アジア近隣諸国との関係は、鄧小平氏の有名な処世訓「韜光養晦(能力を隠して時を待て)」に具現化されているように、「低姿勢のドクトリン」によって導かれてきた。

 鄧氏は当時、台頭するアジアの巨人(中国)の全体的な意味を世界がいったん理解したら、海外で懸念が惹起され、
 中国の経済発展に必要な外部世界の調和が乱されるだろう、と正確に推測していた。
 同時に鄧氏は、米国がひそかに中国を上から抑え続けたがっているのではないか、
 中国がその力を宣伝すれば宣伝するほど、米国が迫り来る挑戦者を「封じ込める」作戦に出るのではないか
とも疑ってもいた。
 そこで鄧氏は考えた。
 とりあえず低姿勢にして目立たないのが得策だ、というのだ。

 しかし、習近平国家主席の下では、長年のこの用心深さが明らかになくなってきている。

 例えば中国は先月、東シナ海の民間機が行き交う広範囲の空域に防空識別圏(ADIZ)の設定を宣言して世界を驚かせた。
 ADIZの設定自体は心配に及ばない。自国領空の外に安全保障上の追加的な緩衝区域としてADIZを持つ国は少なくないからだ。
 しかし、その発表の突然さ(米政府はどうやらわずか数分前に知ったようだ)と、日本が管理しているにもかかわらず中国が領有権を主張する岩だらけの小島(尖閣諸島)の上空がADIZに含まれていたことから、係争領土の収奪の一環のようにみられた。
 そして、中国は自らの行動がどう受け取られるかあまり気に掛けなくなったとの警戒感が多くの外交政策アナリストの間で広がった。

 米太平洋艦隊によると、そのわずか数日後には、米海軍の巡洋艦「カウペンス」が南シナ海で中国人民解放軍(PLA)の艦艇との衝突を避けるため、緊急回避行動を余儀なくされたという。

 米中の艦船間には、過去においてもめてきた経緯がある。
 中国が米軍を中国沿岸から遠ざけようとしているからだ。

 それでも、総合してみると、こうした一連のエピソードは、
 中国の行動の根本的な変化、つまり自信を深めるにつれて、力を誇示することへの抑制を弱めようとしている中国の行動の変化を浮き彫りにしている、と外交政策アナリストは述べている。

 要するに、中国はこれまで世界舞台で自己主張をせずに辛抱強く待機していたが、
 待機が終わりに近づいていることを鮮明にしつつある。
 機は熟した、と考えているのだ。

 この中国の態度の変化は、幾つかの説によって説明される。
 例えば、
★.ナショナリズムの隆盛、
★.軍内部のタカ派をなだめたいという習氏の願望、
★.さらには汚職、土地収用、経済成長鈍化などをめぐる
 国内の社会不安から国民の視線をそらす必要がある
とみられることなどだ。

 加えて、ADIZは、中国の太平洋への出口戦略、つまり日本から台湾を経てフィリピン北部に至るラインで、太平洋への中国の進出を阻止しているいわゆる「第1列島線」に風穴を通すという中国の努力とも適合する。
 さらに、中国がこの目的のために開発してきた兵器、とりわけ潜水艦とミサイルは精巧になっており、米国の戦略的な想定にも影響を及ぼし始めている。

 中国は今や、米国を対等者として扱おうとしており、その意図を隠す必要がないのだ。

 こうしたことは、世界で最も重要な二国間関係としばしばいわれる米中関係に広範な影響をもたらす。

 既に、この米中二国間関係の土台が揺らぎ始めており、ショックに対して一層ぜい弱になっている。
 米国と中国双方の一般国民と各種エリート層(軍、企業、政府、メディア、学者)の最近の意識調査では、米中間の信頼度が低くなっている。
 そしてカーネギー国際平和財団などワシントンと北京のシンクタンクの調査によれば、米中どちらの国も敵とみなす人はほとんどない(米国でわずか15%、中国で12%)が、互いに競争相手であってパートナーではない、との意識が強い。

 そこで問題になるのは、中国の対外戦略上の新たな攻撃性が、支配的な太平洋パワーであり続けるとの米国の断固たる決意(オバマ政権は以前、米国のアジア基軸戦略と呼んだ)と摩擦が生じた場合、何が起こるかだ。

 不信感は敵意に変容するのだろうか? 
 競争は争いにつながるのだろうか。

 カーネギー財団の上級アソシエートで、この調査報告の執筆者の一人であるマイケル・スウェイン氏は、幸いなことにそうなるのはしばらく先だろうと述べている。
 同氏は「米中どちらも、純粋に敵対的な関係に陥りたくないと望んでいる」と述べた。

 他のプラス要因としては、経済的な相互依存が高度で、善かれあしかれ米中両国の運命が結び付けられていること、相互の尊敬の度合いが相当大きいこと(例えば、米国人は中国人の労働倫理を称賛し、中国人は米国人の独創性を高く評価している)、そして米中関係を改善したいという強い希望などが挙げられる。

 しかしスウェイン氏は、関係悪化の「極めて重要な触媒」として、中国と米国の同盟諸国との間の主権争いと、中国沿岸での米軍事活動が挙げられるとも述べた。

 中国が自国の領有権上の要求の声を一段と高めているのに対し、
 米国は公海上の通行権で譲歩する意図が一切ない。
 それだけに、こうした変化は
 少なくともなにか重大な波乱が将来に控えている
ことをうかがわせるのだ。 



レコードチャイナ 配信日時:2013年12月22日 11時48分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=80829&type=0


●20日、アジア太平洋地域の係争の動揺、米国のアジア太平洋リバランス戦略の再強化に伴い、米中関係は再びデリケートで敏感な時期に入った。写真は米国。

   2013年12月20日、アジア太平洋地域の係争の動揺、米国のアジア太平洋リバランス戦略の再強化に伴い、米中関係は再びデリケートで敏感な時期に入った。
 (文:王帆(ワン・ファン)外交学院院長補佐、吉菲菲(ジー・フェイフェイ)外交学院博士課程在学生。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)

 米中の経済関係発展の勢いは依然力強く、両国共に経済、貿易、投資分野の協力の深化を望んでおり、19日には米中合同商業貿易委員会が開かれた。
 その一方で、米国は中国への警戒感と不信感を募らせており、中国の南シナ海の航行禁止区域では米中の軍艦が「遭遇」し、ケリー米国務長官はベトナム、フィリピン訪問時に「中国の防空識別圏を認めない」立場を表明して、米中関係に大きくも小さくもない波瀾を巻き起こした。

 経済・貿易関係は日増しに緊密化し、政治的には防備の姿勢を変えず、軍事的にはたまに摩擦がある。
 これは日増しに強まる米中間の競争的相互依存関係の現れだ。
 米中関係の多面性は、
 第1に冷戦期の対立関係から発展してきたものである両国関係のもともとの基礎が脆弱なためだ。
 第2に両国関係の分野が次第に広範化し、程度が次第に深まっているためだ。
 第3に米中のパワーバランスに中国の台頭、米国の衰退という変化が生じていることによる。
 の変化の絶対的意義は誇張されるべきではないが、それでも米国は自らの地位が脅かされうる懸念を抱くに至った。
 両国関係の再調整期は、政治的懸念と軍事的摩擦に現れている。

 米中関係にとって、ソ連・東欧の激変の影響を受けた1990年代初めの冷え込み期は、最も長く調整が繰り返された時期だった。
 その間、米国は5項目の対中制裁を宣言。1996年には台湾海峡危機も発生した。
 だがまさにこの時期に戦略の見直しと位置づけを繰り返した結果、国際システムの擁護者、改良者としての中国の立場および平和外交を米国は徐々に受け入れ、米中間に利益の合流点と国家共存のモデルが見いだされ、今世紀最初の10年間の米中関係の健全な発展の下地が作られたのだ。

 近年、中国の国力上昇と相対的な米国の国力低下、米国のアジア太平洋回帰戦略に伴い、米中関係は再び調整期に入った。
 1990年代初めと異なり、今回の調整は外的な国際構造の変化によるものではなく、両国間のパワーバランスの変化によるものだ。
 米国の戦略界と政策決定者は防備の心理から、中国を米国の主導的地位に対する潜在的挑戦者と見なし、この想定に基づき戦略を定め、計画を実行している。
 主権の平等性を守る中国の合理的、正当、合法的な行為に対して米国は行き過ぎた解釈をし、あってはならない戦略的誤判断も生じている。
 米中の新型の大国間関係にとって、これはまさに今後解決に力を入れる必要のある問題だ。

 米国は戦略の柔軟性を維持する必要もある。
 中国と対抗する、または中国を封じ込めるに十分な理由と動員環境が米国にはないからだ。
 中国の平和的発展という戦略的意図を米国と周辺国はすでに感じ取っている。
 冷戦時にソ連を封じ込めたように中国を封じ込めることは米国にはできない。
 さらに重要なことに、米中は数多くの利益を共有する。
 経済的相互補完性のために、米中は互いに協力を強く必要としている。
 こうした相互依存関係が「協力すれば共に利し、闘えば共に傷つく」という米中関係の基本的現状を決定づけている。

 現在、再調整期に入った米中関係は2つの異なる発展の方向性を呈している。
 1つは米国の対中不信が日増しに激化する衝突の方向性。
 もう1つは米中が共通利益をより重視して、新型の大国共存モデルを構築する協力の方向性だ。
 米中間のたゆまぬ戦略の見直しと調整の過程において、中国の国力が強大化し続ける中で、いかにして新型の大国間関係を発展させるかが、調整のカギを握る。
 カギを握るこの問題をうまく解決することは、米中両国関係が安定と成熟へ向かうことを意味するのみならず、将来の国際構造・安全保障情勢にとっても重要な意義を持つ。

(提供/人民網日本語版・翻訳/NA・編集/TF)



「中国網日本語版(チャイナネット)」 2013年12月23日
http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2013-12/23/content_30976843.htm

 米日同盟の瓦解、中国は積極的に仕掛けるべき

 東中国海の防空識別圏を巡る中米日の駆け引きにおいて、米日の立場に不一致が見られた。
 中国が防空識別圏を発表してから、日本の米国に対する信頼は強まるどころか、むしろ弱まった。
 中国は米日軍事同盟の弱体化と瓦解に向けて、積極的に仕掛けるべきだ。

 今回の三カ国の駆け引きにおいて、米国の対中政策に対する日本の影響力が大幅に低下したことが示された。
 日本は中国に対する要求を米国に支持させる効果的な手段を持たず、さらに自国の意見を米国に押し付ける力を持たない。
 安倍首相は米日共同で中国に服従を迫り、防空識別圏を撤回するよう求めた。
 バイデン米副大統領は、中日は「危機管理枠組みと効果的な意思疎通のルート」を構築するべきだと呼びかけた。
 これはあたかも日本に対して、中国の防空識別圏はすでに設定されており、撤回する必要はなく、意思疎通を強化すれば良いと言っているかのようだ。
 つまり東中国海の防空識別圏に関して、日本が米国を左右する動きは少しも見て取れない。

 さらに重要な事に、米国の自国の利益に対する関心は、同盟国の利益に対する関心を大幅に上回ることが示された。
 中国の防空識別圏の設定を米国は不快に思っており、意地を張るようにして真っ先にB-52を派遣し、東中国海の防空識別圏を通過させた。
 しかし米国は、本件はここまでであり、中米関係を脅かす程度までエスカレートできないことを理解している。
 米国は小さな同盟国の言いなりになりたがらず、中国に飛行計画を提出するよう国内の航空会社に促し、中日の意思疎通の強化を呼びかけた。
 この手段により、日本の政治家の利益を巡る訴えは、オバマ政権にとって一銭の価値もなくなっている。

 中国は米日軍事同盟の未来の運命に影響を与える、
 強い潜在力を持っていることが分かる。
 日本の米国に対する安心感が薄れるほど、米日軍事同盟の政治的信頼関係が脆弱化する。
 中国は今後さまざまな条件を設け、日本の米国に対する不信感を増すことができる。
 日本の右翼政治家は、米国がいかなる条件下でも日本の利益を守るため犠牲になるとは信じていない。
 米国から見捨てられるリスクに備えるため、彼らは長年に渡り米国のコントロールからの脱却、日本を真の「正常な国」にすることを求めてきた。
 平和憲法の改正は、日本のこの「強い国の夢」を実現するための、法的な地ならしと言える。

 この論理に基づき、米日の政治的信頼関係を弱め、米日の軍事同盟を瓦解させることは、決して不可能ではない。
 中国がこの数年内に攻勢を維持し、日本に対して防空識別圏の設定のような措置を続ければ、
 中国の核心的な利益を固めると同時に、
 米国に日本を裏切らせ続け、日本の米国に対する信頼を損ねることができる。

 国際関係の歴史に詳しい人ならば、どれほど堅固な同盟関係も相次ぐ信頼の危機には耐え切れないことを理解しているはずだ。
 ましてや中国の手中には多くの好カードがあり、これを秩序正しく切り出すことができる。
 米国と限度ある対立を続けると同時に、日本の米国に対する失望を促し、米日の政治的信頼関係を弱めることができる。

(筆者:辜学武 独ボン大学グローバル研究センター長)






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