2013年12月21日土曜日

上海自由貿易区は頓挫する可能性大:そのダメージを拡散するための評価ダウン

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 解放軍が共産党の前面に出てきたために、上海自由貿易区が所定の形で成功する確率が大幅に低下している。
 そこで前もってそれによって受けるダメージを拡散させようというのがこの記事の狙いであろう。


「新華網日本語版」2013年12月21日
http://japanese.china.org.cn/business/txt/2013-12/21/content_30964295.htm

 自由貿易区ブームより開放ブームを必要とする中国

【新華社北京12月21日】
 中国(上海)自由貿易試験区が8月に承認されて以来、「自由貿易区」関連の銘柄が資本市場で人気を集めている。
 上海モデルの自由貿易試験区が短期間で急速に拡大することは難しいとしても、「自由貿易区ブーム」の裏に隠れている「開放ブーム」の勢いを過小評価するべきではない。
 開放により改革を促進し、開放型経済体制を構築する戦略ロジックが中国の経済発展の新たな局面を切り開く見通しである。
 29日付中国証券報が伝えた。

 開放は経済改革、経済発展の中心となるエネルギーである。
 改革・開放の初期からの経済特区の設立や沿岸部開放都市の設定、21世紀初期の世界貿易機関(WTO)への加盟、更には第中国共産党18期中央委員会第三回全体会議(三中全会)で提起された「開放型経済の新体制構築」など、開放は今後も引き続き、中国の経済改革と発展の主なけん引力となる。

 中国の総合的な開放度は世界では依然として、中の下の水準であり、経済のグローバル化という新たな流れに適応するには、開放度をより一層高めることに力を入れる必要がある。
 今後、「自由貿易区ブーム」と同時に「開放ブーム」が盛り上がると見られる。
 そのことを3つの面から解釈することができる。

一]、経済・貿易のグローバル化につながる上海自由貿易区モデルの確立。
 上海自由貿易区は改革の推進と開放型経済の水準向上の「試験モデル」という重要な位置づけにあり、中国が世界の経済・貿易発展の新傾向と新たなルールに適応するために、積極的に取り組んでいる重要な政策であると見なされている。
 現在、中国はアジア太平洋地域の一体化したメカニズムの構築にプラスとなるいかなる措置に対しても、開放的な姿勢をとっている。
 上海自由貿易区の設立はまた、中国とアメリカの二国間投資協定の履行とも関係しており、採用している参入前内国民待遇とネガティブリスト管理は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の要となる条項の一つである。
 サービス業に対する開放度もTPPと似通っており、政府が経済・貿易・投資の管理モデルの刷新を模索するのにプラスとなる。

二]、中日韓自由貿易協定(FTA)や中国・ASEAN(東南アジア諸国連合)自由貿易協定などといった二国間、多国間地域、準地域協力を主体とする周辺地域における自由貿易区モデルを設立・強化する。
 それによって、関連地域の戦略的影響力が高まる。広西チワン族自治区を中心に、ASEANとの協力プラットフォームの設立・整備に取り組み、中国・ASEAN自由貿易協定において、より効果的な役割を果たすことで、国際的な経済協力と競争に参加する能力を強化し、協力の過程でASEAN諸国での影響力が強い地域を形成する。雲南省を中心として、大メコン圏経済協力を深化し、雲南省と東南アジア、南アジア、インド洋沿岸国家の協力を強化することで、西南部から海に出る海運通路を構築することで、西南部の対外開放の足掛かりにすることを目指す。

三]、国境・沿岸・内陸部の三位一体の開放を実現し、関連地域において、自由貿易区内の貨物に対し、『外国』と同様の免税措置を適用するなどといった管理制度を実施することで、サービ貿易の開放度を高め、より開放された緩やかな市場参入条件と産業投資政策を試験的に実施する。雲南省・広西チワン族自治区で国境金融総合改革を試みる。
 また、この所、広西チワン族自治区・東興市と雲南省・瑞麗市などと言った港湾都市に自由貿易試験パークが設立される見込みであるとの情報もある。

 もちろん、「自由貿易ブーム」の継続は、「開放ブーム」が確実に盛り上がることが必要不可欠である。

 1990年代以降の経済・技術開発区、ハイテク産業開発区の設立ブームは、一時的な政策による後押しを受け、開発区のバブル化を招いた。
 そのため、自由貿易区の建設について、政策の効果を期待するよりも改革の効果を重視すべきであり、開放過程で改革を実現することはより重要である。


 共産党は今後、解放軍の尻拭いを度々していかなければならなくなってくる。
 力関係のなせるワザであるからしかたがないが、そのうちイヤになってくるだろう。


ウォールストリートジャーナル     2013年 12月 21日 10:44 JST
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304273404579271050168138272.html?mod=WSJJP_hp_LEFTWhatsNewsCollection

中国、外国企業に開放する政府調達市場を拡大へ
 By     BOB DAVIS

 【北京】中国政府は20日、巨大な政府調達市場のうち外国企業に開放する分野を拡大する意向を明らかにした。
 中国はかねて世界貿易機構(WTO)の「政府調達に関する協定(GPA)」への加盟を目指しており、加盟が実現すれば最終的に中国企業も恩恵を受ける可能性がある。

 中国商務省の王超・次官は米中合同商業貿易委員会(JCCT)の年次会合で、中国政府はGPAに関する「交渉を加速」しようと努めたと述べた。
 王次官は2日にわたり開催された会合後の会見で、中国は「基本的に他の加盟国と同じ」条件に合意すると語ったが、詳細は明らかにしなかった。

 中国は合意案を来年提示する見込み。米国のフロマン通商代表部(USTR)代表は
 「提案を待ち望んでいるとともに、GPAへの加盟受け入れを検討する根拠が見いだせるかどうかを楽しみにしている」
と述べた。

 USTRは中国財務省の調査をもとに、中国政府調達市場の規模を1800億ドル(18兆7000億円)以上と推計している。

 米中の当局者によると、中国はJCCTの協議で米国からのハイテク製品の輸出拡大を求めた一方、中国の対米投資に道を開くよう要請した。
 中国がGPAに加盟すれば、中国企業は米国で公共事業に入札しやすくなる。

 JCCTは、知的財産保護や輸出規則、特定の貿易問題などさまざまな細かい問題に焦点を当てる。
 例えば、中国は20日、遺伝子組み換え品種MIR162を含む米国産トウモロコシ54万5000トンの輸入をこれまでに阻止したことを明らかにした。
 MIR162は米日欧では認可されているが、中国農業省は禁じている。JCCTではこの件についても話し合われた。

 中国農業省の張桃林・次官は、トウモロコシの輸入を阻止した理由として、
 「遺伝子組み換え品種のトウモロコシの輸出に関する安全性評価が完了していなかった」
と述べた。
 フロマン代表は「継続的に取り組んでいる分野」としたが、進展があったかについては明らかにしなかった。

 米国のプリツカー商務長官はインタビューで、今回の会合の最も重要な側面の1つは、今後貿易や投資に関する問題が起きた時に対処できるよう米国の高官が中国の汪洋・副首相をよく知り合うことだったと述べた。 
 汪副首相は協議で中国側を率いた。



ロイター 2013年 12月 25日 10:44 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE9BO00V20131225

焦点:海外からの投資求める中国、外交悪化は障壁にあらず

[北京 23日 ロイター] -
 中国の金融機関に対して今月行われた2つの海外からの投資は、同国が外交上もしくは貿易上の関係が悪化した国からも投資を断らない可能性を示唆するものだ。

 スペインの銀行最大手サンタンデールは10日、上海銀行IP-SHB.SSの株式8%を英HSBCから取得することを明らかにした。
 その2日後には、ノルウェーの政府系ファンドが、中国信達資産管理(チャイナ・シンダ・アセット・マネジメント)の新規株式公開(IPO)で、計11億ドルを投入する「コーナーストーン投資家」(戦略的投資家)に名を連ねた。

 スペインもノルウェーも、貿易や投資とは直接関係ない分野で中国政府の怒りを買ったことがある。

 世界第2位の経済大国となった中国は、外交的に対立する国に暗黙の貿易制裁を加えることがある。
 ただ、中国はその過程で自国経済が痛手を負わないよう注意を払っており、そうした国からの投資には通常影響は及ばない。

 香港城市大学の政治学者、ジョセフ・チェン氏は
 「中国が他の国よりも政治的なタブーを多く持っていることは明らかだ。
 だから、対象を明らかにせず経済制裁を行うことが多々ある
と指摘した。

 2012年に南シナ海の領有問題でフィリピンとの緊張が高まった時、中国は厳しい検疫を課すことで、フィリピンからのバナナの輸入を一時中断した。

 2010年に尖閣諸島(中国名・釣魚島)沖で日本の巡視船と中国漁船との衝突事件が発生した後には、日本企業は中国がレアアース(希土類)輸出を停止したと不満を訴えたが、中国政府はこれを否定した。

 2つのケースではそれぞれ、中国は害虫被害と不法採掘による環境被害というもっともらしい懸念を表明していた。

 尖閣諸島をめぐる緊張が続く中、日本との貿易は2011年以降減少しているものの、日本からの直接投資は増え続けている。

■<ダライ・ラマ効果>

 中国による通達なしの制裁を「経済的いじめ」と呼ぶアナリストもいる。

 2010年にドイツのゲッティンゲン大学の研究者2人が行った調査によると、
 チベット仏教最高指導者のダライ・ラマ14世と会談した国家元首や政府を持つ国は、その後2年間で中国向け輸出が8─17%減少する。
 これは「ダライ・ラマ効果」と呼ばれる

 2008年には、当時フランス大統領だったサルコジ氏がダライ・ラマ14世との会談を決めると、中国はエアバスとの航空機購入契約を延期。
 2国間関係は2010年になってようやく改善した。

 中国はまた、イタリアとドイツに対し、指導者らがダライ・ラマ14世と会談するなら、経済的措置を取ると警告した。

 しかし、必ずしも中国が制裁を実行するとは限らない。
 中国は2010年、台湾への総額64億ドルの武器売却案に関わっていたボーイングを含む米国の航空・防衛企業に対し、制裁を課すと警告していたが、実際には行動に移さなかった。

 最近では、10月にスペインの裁判所が、胡錦濤前国家主席がチベットでの大量虐殺に関与したとする訴えを受理。
 中国政府が内政干渉だとして非難した。
 また同裁判所はその翌月、江沢民元国家主席ら5人の元首脳に対し、同じく大量虐殺に関与した容疑で逮捕状を出す決定をした。
 中国はこれを不条理と一蹴し、スペインの駐中国大使を呼び、懸念を表明した。

 この件をめぐり、中国から何らかの経済制裁を受けたというスペイン当局からの発表はない。

 サンタンデールによる株式取得には、中国銀行監督管理委員会の正式な承認が必要だが、公表されたからには、何らかのかたちで暗黙に承認された可能性があると、アナリストらはみている。

 国内銀行の現状を考えると、中国は投資家に背を向けられないのかもしれない。
 アナリストらによると、
 経済成長が減速し、融資の焦げ付きも見られる中、国内銀行は予想される不良債権の増大を吸収するため、民間資本の参加拡大を求めている。

■<ノルウェーとの関係>

 一方、中国とノルウェーの外交関係は2010年、ノーベル賞委員会が中国の民主活動家で服役中の劉暁波氏に平和賞を授与したのを機に悪化した。

 同氏のノーベル平和賞受賞を受け、中国はノルウェーの閣僚との会談を相次ぎキャンセルし、ノルウェーの要人たちにビザ(査証)を与えなかった。

 ノルウェー産サーモンの中国向け輸出は2011年の第1・四半期に前年同期比で52%減少し、今年も2010年の水準を20%下回っているが、全体的な貿易は増加している。

 ノルウェーと中国の外交関係は改善の兆しもある。
 ノルウェーのブレンデ外相は、まだ野党議員だった今年8月、中国の李克強首相と会談。
 ブレンデ氏は外相に就任した10月、地元紙に対し「中国とノルウェーの関係が正常化することは極めて重要」だと語った。

 ただ、ダライ・ラマ14世が来年5月にノルウェーを非公式訪問する計画が、2国間にとって新たな障害となる可能性もある。

 どちらにせよ、中国は今後、ノルウェーからの投資をさらに期待している。

 中国信達資産管理への投資のほかに、ノルウェーの政府系ファンドは10月、中国国家外為管理局(SAFE)から中国株への投資上限を10億ドルから15億ドルに引き上げられた。
 ブレンデ外相は「中国との良好な対話は私にとっての優先事項だ」と述べている。

(Adam Rose記者、翻訳:伊藤典子、編集:宮井伸明)







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