2013年11月28日木曜日

ウォールストリートジャーナル社説:日米合同の監視体制構築すべき

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●中国が設定した「防空識別圏」を示すコンピューター画面


ウォールストリートジャーナル     2013年 11月 27日 15:51 JST
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702303735804579223192684635568.html?mod=WSJJP_hp_bottom_3_3_bucket_3_right

【社説】米国が中国に示したB52爆撃機という返答

 オバマ政権は、米国の決意をはっきり示すことで知られてはいないが、米国は26日に中国が設けた東シナ海上空の防空識別圏(ADIZ)にB52爆撃機2機を送り込むことで、アジアの同盟国と国際安全保障という大義のために貢献した。

 グアムの米軍基地を離陸した2機は中国政府に事前通告せずに、意図的に防空識別圏に進入した。
 中国は23日、沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海上空に防空識別圏を設定したと発表した。
 この発表は世界にメッセージを送る一方で日本を威嚇する目的だったことは明白だ。
 軍事衝突の危険をはらみつつ、中国が東シナ海や南シナ海で繰り広げている、ますます挑発的な軍事行動のパターンと一致している。

 日米をはじめとする他の諸国も、航空機がそれぞれの領空に進入する際に自らを明らかにすることを義務付ける防空識別圏を設けているが、これとは重要な違いがある。
 航空機が中国の防空識別圏に意図的に侵入するのか、あるいは単に通過しているのかにかかわらず、中国はこうした航空機に武力で対応する意図を示し、防空識別圏内では中国側の指示に従うことを要求している。

 これは世界的航法の通常のルールに干渉するとともに、西太平洋の広大な地域に対する中国の事実上の支配を主張する試みだ。
 ジョン・ケリー米国務長官とチャック・ヘーゲル米国防長官は中国のこの動きについて、直ちに尖閣諸島をめぐる現状を力ずくで変えようとするものだとして非難した。
 ケリー長官はさらに、航法の自由を脅かすものだとの見方を示した。
 これに対し、中国は米国に口出しをしないよう伝えたことから、米国は中国の宣言を容認しないことを明確に示すために、B52を防空識別圏に飛ばすことが必要だった。

 中国政府の瀬戸際政策は、国際水域での米海軍艦艇への頻繁な嫌がらせや、2001年に衝突事故を起こした米海軍のEP3偵察機に対する中国の戦闘機による妨害などを思い起こさせるものだ。
 中国政府は排他的経済水域を外国の軍艦や軍用機が侵入できない領域にしようと試みている。
 これは国際法に対する深刻な違反で、米国の安全保障やオバマ大統領のアジアへの「軸足」が信ぴょう性を持つためには、抵抗する必要がある。

 中国は現在、こうした状況をエスカレートさせる可能性もあるが、米国が同盟国や世界の規範を守る意志を示す場合には、中国がそうする公算は低い。
 中国政府は1996年にミサイル演習を実施して台湾に対して同じような威嚇を行った。当時のクリントン政権が当初気をもんでいた。
 しかし、クリントン元大統領が同地域に空母戦闘群を派遣した後、危機的状況が緩和した。

 中国政府は、敵に投降か衝突かのいずれかの選択を迫る立場に追い込むような、脅しと虚勢戦略の達人だ。
 しかし、今回、中国は行き過ぎた感もある。
 今回の防空識別圏設定は、米国と日本が反応せざるを得なかったためだ。
 米国は条約で、日本が攻撃される場合には防衛の義務があり、その必要性を回避する最善の方法は中国政府に対し、米国がこの条約を真剣に受け止めていることを明確に示すことだ。

 尖閣諸島の支配権を力ずくで獲得しようとすることによって、中国政府は露骨な侵略行為に近づいている。
 そのような脅しは成功しないことを示す必要がある。



ウォールストリートジャーナル     2013年 11月 28日 14:20 JST
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304471504579225080656472664.html?mod=JWSJ_EditorsPicks

【社説】日本との連帯感示した米政権―日米合同の監視体制構築すべき

     オバマ政権が日本との連帯感を示してみせたことを高く評価する。
 日本は沖縄・尖閣諸島の領有権問題をめぐり攻撃的な姿勢を見せる中国に対する防衛策を模索中だ。
 米軍のB52爆撃機2機は26日、中国が先週一方的に設定した尖閣諸島上空を含む防空識別圏(ADIZ)を、中国への事前通告なしに飛行した。
 この飛行に対する中国からの挑戦はなかった。
 おそらく、オバマ大統領のアジアを重視した姿勢が、結局のところ何らかの意味をもっているということだ。

 今回、爆撃機が飛行するまで、尖閣諸島の領有権を巡る中国の瀬戸際政策は1年以上続いていた。
 この中国の瀬戸際政策は尖閣諸島周辺の海域と上空域の現状を変えることが目的だ。
 中国外務省は米爆撃機の飛行に対し、いくらか態度を後退させ、「状況の変化に従い、同様の措置をとる」と述べた。
 だが、本当に防空識別圏が試されるのはこれからだ。
 数日後か数週間後に、中国軍が尖閣諸島周辺の監視目的で防空識別圏をたてに、日本の防衛力に挑戦してきたときだ。

 米国は尖閣諸島の防衛で日本を支援するという条約上の義務をさらに強固にすることで、武力衝突を防ぐ手助けができるだろう。
 それを行う最良の方法は日本側と合同で海空域の監視行動をとることだ。
 仮に中国がこういった監視に挑戦するなら、日米両国を同時に相手にすることになる。
 朝鮮半島に駐留する米軍のトリップワイヤ(陽動部隊)と同様のものだ。

 これは中国の怒りを買い、米国にとっても短期的には中国との経済・外交関係で犠牲を強いられる可能性はある。
 米政府は来週に予定されているバイデン副大統領の訪中を中止することで、いくらか早めにその犠牲を払うことになるかもしれない。
 しかし、中国の挑発的な姿勢を許すことは、偶発的であれ意図的であれ、将来の衝突のリスクが高まることを意味する。

 中国の指導部がなぜ好戦的な態度をとっているのかは不明だ。
①.1つ考えられることは、中国の経済力と軍事力の台頭が自分たちに、ある資格を与えていると感じているということだ。
 その資格とは、かつて東アジアを牛耳っていた先人たちが使った、相手を属国として支配するシステムを再び構築する資格だ。
②.また、国内では政治的な権威が不足しているため、ナショナリスト的な世論を扇動したいのだと指摘する人もいる。
 おそらく、これら2つがいくらか組み合わさっているのだろう。

 いずれにしても、中国は今週、自分たちの脅しが成功するとの見通しを読み誤った。
 米国が政策目標として据えるべきは、
 中国が弱い者いじめを続ける限り中国の挑発は一層の(日米の)団結と決意に直面することを確実に示すことだ。



ウォールストリートジャーナル     2013年 11月 28日 13:02 JST
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304471504579224970974965120.html?mod=JWSJ_EditorsPicks

「防空識別圏」A to Z―領空とはどこが違う?

 米国と中国は最近、防空識別圏(ADIZ)をめぐって対立している。
 中国は先週末、東シナ海の上空にこれを設定すると発表したが、それは日本、韓国、それに台湾のADIZに相当する区域と重なっていた。
 いずれも米国の同盟国ないしパートナーだ。海上で展開されている係争が空に拡大した形だ。
 中国の動きはこの地域の国々、とりわけ日本を怒らせた。
 米国は25日、戦略爆撃機「B52」にこの区域を飛行させた。
 このいざこざをきっかけに、ある国の軍用機を他国の領空周辺でどのように運航すべきか規定する国際的な取り決めや一国の一方的な方針が、いかに複雑に絡み合っているかが浮き彫りにされた。

 ADIZは、一国の領空ないし排他的経済水域(EEZ)とどう区別されているのだろうか。
 テクニカルな定義は、さまざまな複雑な条約や国内法に小さな字で印されている。
 主な用語を理解しやすくするため、以下でざっくりと説明しよう。

 領空
 国際法によると、ある国の主権が及ぶ領空は、領海の外側の境界線までの区域となる。
 領海は海岸線から12カイリ(約22キロ)離れた地点までとされている。
 大半の国は、自国の領空に入る全ての外国の軍用機に対し、飛行の許可を取るよう義務付けており、そうしない場合には撃ち落とすなどといった軍事行動を取る権利を有している。
 中国と日本は、東シナ海に浮かぶ島々(日本で尖閣諸島、中国で釣魚島と呼ばれる)が自国の領土の一部だといずれも主張している。
 また、この島々の上空および、その周囲12カイリの水域(領海)の上空を、自国の主権の及ぶ領空だと主張している。

 排他的経済水域(EEZ)
 海洋法に関する国連条約(略称は国連海洋法条約)によると、どの締約国もEEZの権利を主張できる。
 EEZは締約国に対し、海岸線から最大200カイリの水域で海洋資源を開発する特別な権利を与える。
 EEZが他国のそれと重なる場合は、締約国同士が交渉して境界で合意することになっている。
 大半の国は外国の船が自由にEEZを通過するのを容認している。
 しかし非攻撃型の外国の軍事行動(例えば偵察パトロール)がEEZで容認されるべきかをめぐる見解は一部で分かれている。
 米国は容認されるべきだと考え、中国は容認されるべきでないと考えている。
 中国はよくEEZ上空を飛行する外国の軍用機をインターセプト(阻止)したり、追跡したりするが、通常は撃退しようとしたり、着陸を強制したりしない。

 防空識別圏(ADIZ)
 ADIZは国際法で法的根拠が定められておらず、いかなる国際機関による監督も受けない。
 このため、定義と規則は国によってまちまちだ。
 通常、ADIZは一国の領空のずっと外側まで及んでいて、飛来してくる敵かもしれない外国軍用機に対処するための時間を自国軍に与える。
 米国と日本を含むいくつかの国は一方的にADIZを宣言している。
 こうした国の多くは、外国の軍用機がADIZに入る場合には、自らの身元と飛行計画を明らかにするよう義務付けている。
 これらの国々はADIZ内で、外国の軍用機の飛行をインターセプトし、エスコート(護送)することがよくあるが、脅威だとみなさない限り、撃退したり、着陸を強要したりすることはない。
 米国は、ADIZ手続きを適用するのは、自国の領空に進入する意図のある外国の航空機のみだと述べている。
 中国のADIZは日本、韓国、それに台湾のそれと重なっており、しかも係争領土の上空を含むという点で異例だ。




【*****新中華帝国の暴走*****】


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